日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 大岡昇平 » 正文

野火10

时间: 2017-02-27    进入日语论坛
核心提示:一〇 鶏鳴 二日の後、私はその椰子の林を去った。立ち上るのには努力を要したが、一度立ってしまえば、後は機械的に足が運ばれ
(单词翻译:双击或拖选)
 一〇 鶏鳴
 
 二日の後、私はその椰子の林を去った。立ち上るのには努力を要したが、一度立ってしまえば、後は機械的に足が運ばれた。
 私の眼はしかし依然として、樹に実を求めていた。観覧席のように河原に臨んだ斜面の林の中に、私は眼を凝らして球形の懸垂物を探していた。無駄であった。熱帯の狂わしく繁った緑が、どぎつく陽を照り返しているばかりであった。常夏の国の天然の恵みに関する、北方人の空想を私は嘲った。
 褐色の石がごろごろした河原を、私はどこまでも下って行った。岸の土から石油らしい黒い液体が、艶のある雑色の模様を浮べて滲み出て、流れに達することなく、砂に吸い込まれていた。
 川は次第に広く、岸に草原が発達して、芒が輝き出した。人間のように群がって、河原の最もささやかな堆土にも、根を下しに来た。繊毛が風に立ち、花穂の周囲に戯れて、それから遠い空間に撒開した。
 一つの丘があった。両側を細い支流に区切られて独立し、芒が馬の鬣のように、頂上まで匍い上っていた。その形を私は何故か女陰に似ていると思った。
 私の足はその丘に向った。道があり、一条に芒の連る線を真直に上っていた。紅土を露出した道は、草根の発達した土から、五寸ばかり深く刻まれていた。
 刻まれた側面は凹んだ短い弧の連続で、明らかにシャベルの背の曲線を示していた。この淋しい谷に見る人間の道具の跡は、私を戦慄させた。
 その時私は耳に鶏鳴を聞いた。丘の上から、静かな午後の空気を引き裂いて、けたたましく、続けて鳴いた。 
 シャベルの跡と鶏鳴——この結合から私に来た観念は「比島人」であった。つまり我々侵入者を懲らしめようと、常に用意している危険な存在であった。しかし私は上り続けた。
 頂上で芒の列は尽き、鞍状の草原が延びて、先に黒い喬木を並べた木立が見えた。鶏鳴がまたその奥でした。
 道はやはり草原に深く刻まれて、木立に到っていた。その緑の蔭の中に、門柱のように二本の丸太が立っているのが見えた。そこを通ると、道は二叉に分れ、庭園風の人工的な曲線を描いて、一つの叢を挟んでいた。先に陽が光っていた。
 静かであった。叢を廻った向うに家があり、人と鶏がいるのはたしかと思われた。一瞬逡巡が私を捉えたが、銃を取り直し、押されるように、光の中へ出て行った。
 意外な光景が私を待っていた。斜面が開け、大木の枯れた樹幹が、半町ばかり嶮しく降った下まで、縦横に横わっていた。底に一方が開いた窪地があり、それを越した対面に、同じような倒木を持つ斜面が匍い上って、林に囲われていた。
 人はいなかった。一軒の小屋が斜面を見晴し、数羽の鶏が軒に近い一樹にとまって、近づくと、また鳴いた。樹は萩に似た橢円形の細かい葉をつけ、軒よりわずかに高かった。
 鶏は痩せた黒い比島の鶏であった。やはり飼鳥であろう、人を怖れる様子はなく、ひとしきり鳴き交すと、あとは黙って、一斉に横顔を向けてじっとしていた。
 一瞬私は極楽鳥の幻影を見た。眼の高さから交互に生えた枝に、一枝に一羽ずつとまった規則性も、この世のものでないように思われた。
 しかし私が次に考えたのは、やはり彼等を捕えることであった。私は日本の鶏のように肥満していない彼等が、よく飛ぶのを知っていた。私は慎重に近より、不意打しようとした。しかし、彼等は私が手を延ばす前に一斉に飛び立ち、遠い地面に降りた。
 私は地に伏して銃を構え、慎重に覘って撃った。彼等はグライダーほどの角度で飛び立ち、斜面を下へ、遠く飛んで着陸した。そしてさらに短く連続して鳴きながら、駈けて行った。
 やるせない思いが胸を走った。膂力なく射撃をよくしない私は、かつて椰子の根方に無為に横わっていたように、今はこの極楽鳥を目の前に、飢えていなければならないのである。
 鶏は斜面の下の遠いところを、射撃者を無視した足取りで歩いていたが、時々立ち止り、地面についばんだ。何を食べているのであろう。いや、あそこに食べるものがある。
 しかし倒木の間を下りて行きながら、私は鶏の食べているものを確める必要がないのを知った。根株の間に到るところ、カモテ・カホイ(木の芋)と呼ばれる、木のような高い茎を持つ芋が植えてあった。蔓芋の葉も匐っていた。私はすぐカモテ・カホイの直立した茎の一本を倒した。地下茎が千成瓢箪のようについていた。手で土を払いかじった。
 芋は歯の間で崩れるように噛みくだかれて喉を通った。何本目かで私は漸くその甘味を感じ、窪地へ降りて、そこを流れる水を飲み、芋についた土を洗い落す余裕を持った。
 水は窪地の奥に湧いていた。いぼのように火山灰を盛り上げて吹き出し、薄く膜のように溜っていた。周囲は小枝を挿して囲ってあった。流れの下に私は里芋の特徴ある葉と茎を認めた。ここは比島人の山の畠だったのである。
 日本の敗残兵が食糧を漁っているこの山間に、こういう畠が残されていたことは奇蹟に近かった。もし私がロビンソン・クルーソーであったら、ここで土に跪いて神に感謝を捧げたであろう。極東の無神論者にとっても、これは確かに何者かに感謝すべき情況であったが、何に感謝していいか、私にはわからなかった。
 豆もあった。灌木ほどの高さに育ち、鉈状の房が褐色に熟れてはじけ、小さな黒い粒を露出させていた。(鶏が啄んでいたのは、この豆の地上に落ちたものであった)。また或る草は蛇苺のような赤い小粒をつけ、トマトの味と匂いがあった。
 飽食した私は再び小屋へ上って行った。小屋は竹の柱に茅を屋根としていた。埃が匂い、床が軋んだ。土間には土を築いた簡単な竈があり、二つ三つこわれた土器が倒れていた。割竹を並べて上げた床には、花模様を刺繍した洋風のクッションのほか、何もなかった。私はその不思議なクッションを枕にすると、忽ち深い眠りに落ちた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%