日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 大岡昇平 » 正文

野火22

时间: 2017-02-27    进入日语论坛
核心提示:二二 行人 さらに二、三本を倒して根芋を取り、僚友にならって、被甲の中身をすてて、そこにも収めると、我々は出発した。 伍
(单词翻译:双击或拖选)
 二二 行人
 
 さらに二、三本を倒して根芋を取り、僚友にならって、被甲の中身をすてて、そこにも収めると、我々は出発した。
 伍長が先導した。私が最初この畠へ上って来た道を逆行して河原へ降り、暫く流れに沿って下ってから、最初の屈折点で、別の丘へ取りついた。
 北を目指すべきであった。東西両海岸の米軍の連絡は既に成っていたが、オルモック街道がリモンの北で二つに分れ、一つがパロンポンに向っている地点がある。そこから半島に入ることが出来るであろうという、伍長の判断であった。
 二つの丘と二つの川を杣道で越した後、牛車の通れるくらいの幅の道に出た。
「飛行機に気をつけるんだぞ。道はねらって来るからな」と伍長がいった。
 米機が道をねらうのはもっともであった。三々五々連れ立った日本兵が、丘の蔭、叢林から不意に現われて、道に加った。そしてやがて一個中隊ほどの蜒々たる行軍隊形になった。
 道が草原に露出しているところでは、列は道を外れて林に潜り、先でまた林に入って来る道を捉えた。そういう林中の道は、時々都会の鋪道のように雑沓した。
 兵達の状態は、見違えるように、悪くなっていた。服は裂け、靴は破れ、髪と髯が延びて、汚れた蒼い顔の中で、眼ばかり光っていた。その眼は互いに隣人を窺ように見た。
 パロンポンへ、パロンポンへ。彼等はそれぞれ飢え、病み、疲れた体を引きずって、一つの望みにつながり、人におくれまいとして、一条の道を歩いて行った。上り坂の両側は休む、或いは倒れた兵の列であった。
 軍命令は米軍にも知れているのであろう。林中の道ですら、頭上に低く飛行機の爆音を聞き、機銃掃射があった。兵達は急いで四散し、新しい死者と傷者が道端に増えた。
 夜になった。伍長は我々を導いて道をはずれ、谷に降り、弾の尻から火薬を抽き出し、木の枝でこすって火を起した。畠で一週間も生芋を齧り、比島の男女を「燐寸をくれ」と脅かした私は、この簡単な方法に気がつかなかった迂闊に、我ながら驚いた。その夜私は久振りで暖い食物を口にした。
 兵の中に、我々のように豊かに食糧を持った者が、殆んどいないのはたしかであった。だから我々は道から離れて食べたのである。
 食べ終ると、再び道に出、月光の中を進んだ。木下闇に兵の帯剣と飯盒の触れ合う音が響いた。道がはかどった。
 夜が明けると、林に入って眠り、夕方行軍を開始した。夜道の方が爽やかで、被爆の危険がなかったからであるが、月が、細く暗くなるに及んで、昼間の行軍に返った。
 路傍に倒れた兵士の数が多くなった。私は死んだ兵士の銃を取る機会をねらっていたが、死者の傍に銃があることは絶えてなかった。最初から持っていないか、或いは素速く取り去られるからであろう。
 私の感想を伍長は笑って聞いていたが、或る時、
「そら、取って来てやったぞ」
 と、追いついて、私に渡した。
「これ、ほんとに死人の銃でありますか」
 伍長は眼をむいた。
「死人のじゃなかったら、どうしたっていうんだ。いやならよせ」
「馬鹿野郎、班長がくれたら黙って貰ってりゃいいんだ」
 と傍から上等兵が低声で注意した。彼は自分の分はいつの間にか手に入れていた。
「はい、有難くあります」
 倒れた傷兵の傍をすぎる毎に、私は漠然とした胸の悩みを感じた。かつて病院が砲撃された時、笑って仲間を見棄てることが出来たのは、私も前途に死しか予想出来なかったからであったが、パロンポン集合の希望を持った今では、自責を感ぜずにはいられなかったのである。
 しかし路傍にますます増えて行く倒兵の数に、私は次第に馴れた。彼等はただ徒らに倒れているだけではなかった。彼等は生きていた。
 或る者は木の根の程よきところに宿所を選び、持物を枕元に整頓して、静かに横たわっていた。或る者は胡坐して、ぎらぎら光る眼で通行人を凝視していた。草に伏して、道行く人に絶えず、
「隊の兵隊はいませんか」
 と叫んでいる兵士もいた。
 或る日私は、病院の前で別れた二人の病兵に会った。今では歩けないのは安田であり、若い永松は元気になっていた。彼は通行の兵士に煙草を薦めていた。
「煙草いらないか。葉っぱ一枚で芋三本だ。二本でもいい」
 しかしここは病院とは違って、煙草に替えるほど、食糧に余裕のある者は一人もなかった。
「馬鹿野郎。今頃誰が煙草なんぞ買うものか。参謀でも探して売れ。後からすぐ師団参謀が来らあ」とわが伍長が嘲った。
「ほんとですか」
「ほんとか、嘘か。来てみるまでわかるもんか。間抜け」
 永松は私を覚えていた。
「やあ、田村、まだ生きていたのか」
「ふん、お前達こそ、どうした」
 私は同行者に眼で後から行くと合図して、立ち止った。
「どうも、こうもねえ。すっかりやられちゃったよ」
「何をやられたんだ」
「何をって、——あんなひでえ奴はねえ」
「誰がひでえんだ」
「あの安田のおっさんと一緒に歩くことにきめたなあいいが、何のかんのって我儘ばかりいやがって。体のいい小使よ。お蔭様で、今じゃ、こうやって煙草売りさ。あの野郎てんで動かねえんだ」
 彼の顎でしゃくる方には、四、五間離れた叢に天幕を張って胡坐し、笑って手招きしている安田の姿が見えた。
 相変らず、右足を前方へ延ばしたまま、木に凭れていた。
「ああ、田村か。何だか肥ったようだな。糧秣豊富らしいじゃねえか」
「何だかわからねえが、ぼつぼつやってるんだ」
「俺も永松のおかげで、ここまで来たが、どうもこれから先は自信がねえ」
「自信なんかある奴はないだろう。でもその足じゃ大変だな」
「永松が肩をかしてくれるんで、ぼつぼつ行けるんだ」
「肩を?」
 この敗軍の中で、他人に肩をかす男がいるとは意外であった。永松は苦笑していた。
「肩をかしてやんなきゃ、飯が食えねえんだから、仕様がねえ。糧秣はねえし、おっさんの煙草だけが、頼りだからな」
「そうだ。この煙草のなくならねえうちに、パロンポンへ着かなきゃならねえ」
「こうなると、煙草もあんまり売れねえだろうが」
「そんなことあるものか」と安田は傲慢に答えた。「人間どうなっても、煙草なしじゃ、生きて行けねえ。情況が悪くなればなるほど、煙草をほしがるから妙だ。現にこうやって細々ながら、商売があるものな」
「そうでもねえぜ、おっさん」
「おめえの売り方が悪いからだ。兵隊は最後の一本の芋は、煙草と取り替えるもんだ」
 この間にも道に兵士の列は絶えなかった。将校らしい一団が通りかかるのを見ると、永松は駈け出し、敬礼して、煙草の葉を差し出した。将校は諾いて受け取った。傍についていた下士官が永松を殴った。
「馬鹿野郎。こんな時に煙草なんぞ交換してる奴があるか。さっさと集合地へ急ぐんだ。いいか」
 と下士官は怒鳴った。そして一団は遠ざかって行った。
 頬を撫でながら帰って来た永松を、こんどは安田が怒鳴りつけた。
「品物を受け取る前に、渡す奴があるか。いつまでお前はそう頓馬なんだ」
「殴って持ってかれたのは、これが初めてだ」
「これからもあるこった。気をつけろ。馬鹿」
 その他口汚い罵倒の言葉が続いた。私は立ち去る時だと思った。
 歩き出す私を、安田はまだ忿懣の残った眼で睨んでいたが、永松は未練がましく随いて来た。
「まったくやり切れねえよ」と彼はこぼした。
「いい加減でほっぽり出したらいいじゃねえか。ああまでいわれながら、彼奴の世話をする義理もねえだろう」
「義理はねえが、彼奴と別れて、どうも俺には一人でやって行けそうにもねえ。彼奴の煙草がなくっちゃ、早い話明日食うものがねえもの」
「そんなに煙草が大切かな。お前だってそこに少しは持ってるんだろう。逃げちまえ」
「そうは行かねえ。彼奴がちゃんと握って放さねえんだ。商売があるたんびに、一枚ずつ渡してくれる」
 私は吹き出した。しかし気の弱い永松が、一度安田につかまった以上、なかなか逃れられない理由も呑み込めた。
「まあこんなとこで煙草売りで手間取るより、早くパロンポンへ行った方が勝ちだぜ」
「ほんとをいうとな」と永松は声を低めた。「安田はパロンポンへ行く気はねえんだ。どこでもいい、米さんに会い次第、手を挙げるつもりなんだ。ただ、米さんは飛行機や迫撃砲で来るばっかりで、なかなかお目に掛れねえ」
 私は永松の蒼い長い顔を見凝めた。
「おめえも降服するつもりなのか」
「そんな時になってみねえとわからねえが、まあ、何でも安田のする通りに、するつもりだ」と下を向いて彼は答えた。
 私はとにかく「さよなら」といって彼等を見棄てた。足を早めて先に行った伍長達を追ったが、なかなか追いつくことは出来なかった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%