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破戒10-4

时间: 2017-06-03    进入日语论坛
核心提示:       (四) 日の光は斯(こ)の小屋の内へ射入つて、死んで其処に倒れた種牛と、多忙(いそが)しさうに立働く人々の
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        (四)
 
 日の光は斯(こ)の小屋の内へ射入つて、死んで其処に倒れた種牛と、多忙(いそが)しさうに立働く人々の白い上被(うはつぱり)とを照した。屠手の頭は鋭い出刃庖丁を振つて、先づ牛の咽喉(のど)を割(さ)く。尾を牽(ひ)くものは直に尾を捨て、細引を持つものは細引を捨てゝ、いづれも牛の上に登つた。多勢の壮丁(わかもの)が力に任せ、所嫌はず踏付けるので、血潮は割かれた咽喉を通して紅(あか)く板敷の上へ流れた。咽喉から腹、腹から足、と次第に黒い毛皮が剥取(はぎと)られる。膏と血との臭気(にほひ)は斯の屠牛場に満ち溢(あふ)れて来た。
 他の二頭の佐渡牛が小屋の内へ引入れられて、撃(う)ち殺されたのは間も無くであつた。斯の可傷(いたま)しい光景(ありさま)を見るにつけても、丑松の胸に浮ぶは亡くなつた父のことで。丑松は考深い目付を為乍(しなが)ら、父の死を想(おも)ひつゞけて居ると、軈て種牛の毛皮も悉皆(すつかり)剥取られ、角も撃ち落され、脂肪に包まれた肉身(なかみ)からは湯気のやうな息の蒸上(むしのぼ)るさまも見えた。屠手の頭は手も庖丁も紅く血潮に交(まみ)れ乍ら、あちこちと小屋の内を廻つて指揮(さしづ)する。そこには竹箒(たけばうき)で牛の膏(あぶら)を掃いて居るものがあり、こゝには砥石を出して出刃を磨いで居るものもあつた。赤い佐渡牛は引割と言つて、腰骨(こしぼね)を左右に切開かれ、其骨と骨との間へ横木を入れられて、逆方(さかさま)に高く釣るし上げられることになつた。
『そら、巻くぜ。』と一人の屠手は天井にある滑車(くるま)を見上げ乍ら言つた。
 見る/\小屋の中央(まんなか)には、巨大(おほき)な牡牛の肉身(からだ)が釣るされて懸つた。叔父も、蓮太郎も、弁護士も、互に顔を見合せて居た。一人の屠手は鋸(のこぎり)を取出した、脊髄(あばら)を二つに引割り始めたのである。
 回向(ゑかう)するやうな持主の目は種牛から離れなかつた。種牛は最早(もう)足さへも切離された。牧場の草踏散らした双叉(ふたまた)の蹄(つめ)も、今は小屋から土間の方へ投出(はふりだ)された。灰紫色の膜に掩(おほ)はれた臓腑は、丁度斯う大風呂敷の包のやうに、べろ/\した儘(まゝ)で其処に置いてある。三人の屠手は互に庖丁を入れて、骨に添ふて肉を切開くのであつた。
 烈しい追憶(おもひで)は、復た/\丑松の胸中を往来し始めた。『忘れるな』――あゝ、その熱い臨終の呼吸は、どんなに深い響となつて、生残る丑松の骨の膸(ずゐ)までも貫徹(しみとほ)るだらう。其を考へる度に、亡くなつた父が丑松の胸中に復活(いきかへ)るのである。急に其時、心の底の方で声がして、丑松を呼び警(いまし)めるやうに聞えた。『丑松、貴様は親を捨てる気か。』と其声は自分を責めるやうに聞えた。
『貴様は親を捨てる気か。』
 と丑松は自分で自分に繰返して見た。
 成程(なるほど)、自分は変つた。成程、一にも二にも父の言葉に服従して、それを器械的に遵奉(じゆんぽう)するやうな、其様(そん)な児童(こども)では無くなつて来た。成程、自分の胸の底は父ばかり住む世界では無くなつて来た。成程、父の厳しい性格を考へる度に、自分は反つて反対(あべこべ)な方へ逸出(ぬけだ)して行つて、自由自在に泣いたり笑つたりしたいやうな、其様(そん)な思想(かんがへ)を持つやうに成つた。あゝ、世の無情を憤(いきどほ)る先輩の心地(こゝろもち)と、世に随へと教へる父の心地と――その二人の相違は奈何(どんな)であらう。斯う考へて、丑松は自分の行く道路(みち)に迷つたのである。
 気がついて我に帰つた時は、蓮太郎が自分の傍に立つて居た。いつの間にか巡査も入つて来て、獣医と一緒に成つて眺めて居た。見れば種牛は股(もゝ)から胴へかけて四つの肉塊(かたまり)に切断(たちき)られるところ。右の前足の股の肉は、既に天井から垂下(たれさが)る細引に釣るされて、海綿を持つた一人の屠手が頻と其血を拭ふのであつた。斯うして巨大(おほき)な種牛の肉体(からだ)は実に無造作に屠(ほふ)られて了(しま)つたのである。屠手の頭が印判を取出して、それぞれの肉の上へ押して居るかと見るうちに、一方では引取りに来た牛肉屋の丁稚(でつち)、編席(アンペラ)敷いた箱を車の上に載せて、威勢よく小屋の内へがら/\と引きこんだ。
『十二貫五百。』
 といふ声は小屋の隅の方に起つた。
『十一貫七百。』
 とまた。
 屠(ほふ)られた種牛の肉は、今、大きな秤(はかり)に懸けられるのである、屠手の一人が目方を読み上げる度に、牛肉屋の亭主は鉛筆を舐(な)めて、其を手帳へ書留めた。
 やがて其日の立会も済み、持主にも別れを告げ、人々と一緒に斯の屠牛場から引取らうとした時、もう一度丑松は小屋の方を振返つて見た。屠手のあるものは残物の臓腑を取片付ける、あるものは手桶(てをけ)に足を突込んで牛の血潮を洗ひ落す、種牛の片股は未(ま)だ釣るされた儘で、黄な膏(あぶら)と白い脂肪とが日の光を帯びて居た。其時は最早あの可傷(いたま)しい回想(おもひで)の断片といふ感想(かんじ)も起らなかつた。唯大きな牛肉の塊としか見えなかつた。
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