日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 岛崎藤村 » 正文

破戒22-3

时间: 2017-06-03    进入日语论坛
核心提示:       (三) 力の無い謦(せき)の声が奥の方で聞えた。急にお志保は耳を澄して心配さうに聞いて居たが、軈(やが)て
(单词翻译:双击或拖选)
        (三)
 
 力の無い謦(せき)の声が奥の方で聞えた。急にお志保は耳を澄して心配さうに聞いて居たが、軈(やが)て一寸会釈(ゑしやく)して奥の方へ行つた。銀之助は独り炉辺(ろばた)に残つて燃え上る『ぼや』の火炎(ほのほ)を眺(なが)め乍ら、斯(か)ういふ切ない境遇のなかにも屈せず倒れずに行(や)る気で居るお志保の心の若々しさを感じた。烈しい気候を相手に克(よ)く働く信州北部の女は、いづれも剛健な、快活な気象に富むのである。苦痛に堪へ得ることは天性に近いと言つてもよい。まあ、お志保も矢張(やはり)其血を享(う)けたのだ。優婉(やさ)しいうちにも、どことなく毅然(しやん)としたところが有る。斯う銀之助は考へて、奈何(どう)友達のことを切出したものか、と思ひつゞけて居た。間も無くお志保は奥の方から出て来た。
『奈何(どう)ですか、父上(おとつ)さんの御様子は。』と銀之助は同情深(おもひやりぶか)く尋ねて見る。
『別に変りましたことも御座ませんけれど、』とお志保は萎(しを)れて、『今日は何(なんに)も頂きたくないと言つて、お粥(かゆ)を少許(ぽつちり)食べましたばかり――まあ、朝から眠りつゞけなんで御座ますよ。彼様(あんな)に眠るのが奈何(どう)でせうかしら。』
『何しろ其は御心配ですなあ。』
『どうせ長保(ながも)ちは有(あり)ますまいでせうよ。』とお志保は溜息を吐いた。『瀬川さんにも種々(いろ/\)御世話様には成ましたが、医者ですら見込が無いと言ふ位ですから――』
 斯う言つて、癖のやうに鬢(びん)の毛を掻上げた。
『実に、人の一生はさま/″\ですなあ。』と銀之助はお志保の境涯(きやうがい)を思ひやつて、可傷(いたま)しいやうな気に成つた。『温い家庭の内に育つて、それほど生活の方の苦痛(くるしみ)も知らずに済(す)む人もあれば、又、貴方のやうに、若い時から艱難(かんなん)して、其風波(なみかぜ)に搓(も)まれて居るなかで、自然と性質を鍛(きた)へる人もある。まあ、貴方なぞは、苦んで、闘つて、それで女になるやうに生れて来たんですなあ。左様(さう)いふ人は左様いふ人で、他(ひと)の知らない悲しい日も有るかはりに、また他の知らない楽しい日も有るだらうと思ふんです。』
『楽しい日?』とお志保は寂しさうに微笑(ほゝゑ)み乍ら、『私なぞに其様(そん)な日が御座ませうかしら。』
『有ますとも。』と銀之助は力を入れて言つた。
『ほゝゝゝゝ――是迄(これまで)のことを考へて見ましても、其様な日なぞは参りさうも御座ません。まあ、私が貰はれて行きさへしませんければ、蓮華寺の母だつても彼様(あん)な思は為ずに済みましたのでせう。彼母を置いて出ます前には、奈何(どんな)に私も――』
『左様でせうとも。其は御察し申します。』
『いえ――私はもう死んで了(しま)ひましたも同じことなんで御座ます――唯(たゞ)、人様の情を思ひますものですから、其を力に……斯(か)うして生きて……』
『あゝ、瀬川君のも苦しい境遇だが、貴方のも苦しい境遇だ。畢竟(つまり)貴方が其程苦しい目に御逢(おあ)ひなすつたから、それで瀬川君の為にも哭(な)いて下さるといふものでせう。実は――僕は、あの友達を助けて頂きたいと思つて、斯うして貴方に御話して居るやうな訳ですが――』
『助けろと仰ると?』お志保の眸(ひとみ)は急に燃え輝いたのである。『私の力に出来ますことなら、奈何(どん)なことでも致しますけれど。』
『無論出来ることなんです。』
『私に?』
 暫時(しばらく)二人は無言であつた。
『いつそ有の儘を御話しませう。』と銀之助は熱心に言出した。『丁度学校で宿直の晩のことでした。僕が瀬川君の意中を叩いて見たのです。其時僕の言ふには、「君のやうに左様(さう)独りで苦んで居ないで、少許(すこし)打明けて話したら奈何(どう)だ。あるひは僕見たやうな殺風景なものに話したつて解らない、と君は思ふかも知れない。しかし、僕だつて、其様(そん)な冷(つめた)い人間ぢや無いよ。まあ、僕に言はせると、あまり君は物を煩(むづか)しく考へ過ぎて居るやうに思はれる。友達といふものも有つて見れば、及ばず乍ら力に成るといふことも有らうぢやないか。」斯(か)う言ひました。すると、瀬川君は始めて貴方のことを言出して――「むゝ、君の察して呉れるやうなことがあつた。確かに有つた。しかし其人は最早(もう)死んで了つたものと思つて呉れたまへ。」斯う言ふぢや有ませんか。噫――瀬川君は自分の素性を考へて、到底及ばない希望(のぞみ)と絶念(あきら)めて了(しま)つたのでせう。今はもう人を可懐(なつか)しいとも思はん――是程悲しい情愛が有ませうか。それで瀬川君は貴方のところへ来て、今迄蔵(つゝ)んで居た素性を自白したのです。そこです――もし貴方に彼(あ)の男の真情(こゝろもち)が解りましたら、一つ助けてやらうといふ思想(かんがへ)を持つて下さることは出来ますまいか。』
『まあ、何と申上げて可(いゝ)か解りませんけれど――』とお志保は耳の根元までも紅(あか)くなつて、『私はもう其積りで居りますんですよ。』
『一生?』と銀之助はお志保の顔を熟視(まも)り乍ら尋ねた。
『はあ。』
 このお志保の答は銀之助の心を驚したのである。愛も、涙も、決心も、すべて斯(こ)の一息のうちに含まれて居た。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%