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白夜行7-1

时间: 2017-01-17    进入日语论坛
核心提示: 原稿には、渦《うず》電流式探傷コイルの形状、というタイトルが付けられていた。ラジエータチューブの欠陥を発見する器具に関
(单词翻译:双击或拖选)
 原稿には、渦《うず》電流式探傷コイルの形状、というタイトルが付けられていた。ラジエータチューブの欠陥を発見する器具に関する特許出願用の原稿だった。それを書いた技術者との打ち合わせを電話で終えた後、高宮誠は立ち上がった。そしてコンピュータの端末機が四台並んだ壁際に目をやった。すべての機械に担当者が一名ずつつき、彼のほうに背中を見せていた。担当者は全員女性だ。四人のうち東西電装の職服を着ているのは右端の一人だけで、残る三人は私服姿だった。彼女たちは派遣社員なのだ。
 従来まで、この会社の特許情報はすべてマイクロフィルムに収められてきたが、今後はコンピュータで簡単に検索が行えるよう、フロッピーディスクに記録されることになった。彼女たちは、その移し換えのために雇われていた。最近では、こうした派遣社員を利用する企業が増えてきている。人材派遣業は厳密にいえば職業安定法違反の疑いが濃かったのだが、先の国会で法的に認知された。だがそのかわりに、派遣労働者の保護を目ざす「労働者派遣事業法」も同時に成立している。
 誠は彼女たちに近づいていった。いや正確にいうと、一番左端の背中に向かって歩いていった。長い髪を後ろで束ねているのは、キーボードを操作するのに邪魔になるからだと、以前ちょっと立ち話をした時に誠は聞いていた。
 三沢《みさわ》千都留《ちづる》は端末の画面と横に置いた紙を交互に見ながら、めまぐるしいスピードでキーを叩いていた。あまりにも速いので、生産ラインの機械が動いているように聞こえた。無論それは、他の三人についてもいえることだった。
「三沢さん」と誠は斜め後ろから呼びかけた。
 まるで機械のスイッチを切ったように千都留の両手は止まった。ワンテンポ遅れて彼女は誠のほうを向いた。縁が黒く、レンズの大きい眼鏡を彼女はかけていた。そのレンズの向こうの目は、画面を見続けていたせいか、少し険しくなっていたが、誠の顔を認めると同時に、ふっと力が抜けたように優しいものに変わった。
「はい」と彼女は答えた。その時にはもう、口元にも笑みが浮かんでいた。乳白色をした肌理《きめ》の細かい肌に、明るいピンクの口紅がよく似合っている。丸顔なので少し幼く見えるが、誠より一つ年下なだけだということも、これまでの何気ない会話から彼は探り当てていた。
「渦電流探傷という項目で、これまでにどういう出願があったか調べたいんだけど」
「うずでんりゅう?」
「こういう字を書くんだ」誠は持っていた書類のタイトルを彼女に見せた。
 千都留は素早くそれをメモした。
「わかりました。検索してみて見つかりましたら、プリントアウトして席までお持ちすればいいですね」歯切れのいい口調で彼女はいった。
「悪いね。忙しいのに」
「いえ、これも仕事のうちですから」千都留は微笑んだ。仕事のうち、というのは彼女の口癖だった。あるいはそれは派遣社員の口癖なのかもしれなかったが、他の女性とは殆ど話をしたことがなかったので、本当のところは誠にはわからなかった。
 誠が席に戻ると、先輩の男性社員が休憩しないかと誘ってきた。この会社では、役員室や来客室などの特殊な場所を除いて、職場で女子社員にお茶くみなどをさせることは固く禁じられている。社員は休憩したくなったら、自動販売機で紙コップに入った飲み物を買うのだ。
「いえ、俺は後でいいです」誠はその先輩社員にいった。それで先輩は一人で部屋を出ていった。
 高宮誠は東西電装東京本社特許ライセンス部に配属されて三年になる。東西電装は、スタータやプラグなど、自動車に使われている電気部品を製造している会社だ。そして特許ライセンス部では、自社製品に関わる全《すべ》ての工業的権利を管理していた。具体的には、技術者が考案した技術などについて特許出願しようとするのを手助けしたり、他社と特許問題で争わねばならない時に対抗措置を整えたりするのだ。
 しばらくすると三沢千都留がプリントアウトされた紙を持ってやってきた。
「これでいいですか」
「助かったよ。ありがとう」誠は書類に目を通しながらいった。「三沢さん、もう休憩した?」
「いえ、まだですけど」
「じゃあ、お茶を御馳走《ごちそう》するよ」そういって誠は立ち上がり、出口に向かった。途中でちらりと後ろを見て、千都留がついてくるのを確認した。
 自動販売機は廊下に置いてある。誠はコーヒーの入った紙コップを手にすると、そこから少し離れた窓際で、立ったまま飲むことにした。千都留も、レモンティーの入ったカップを両手で持ってついてきた。
「いつも大変そうだね。あんなふうにキーボードを叩《たた》きっぱなしで、肩が凝らない?」誠は訊いた。
「肩よりも目が疲れます。一日中、モニターを見続けてますから」
「ああ、そうか。目が悪くなりそうだね」
「この仕事をするようになってから、視力がずいぶん落ちました。以前は、眼鏡がなくても平気だったんですよ」
「ふうん。一種の職業病だね」
 コンピュータの前に座っている時以外は、干都留は眼鏡を外している。そうすると、彼女の目がさらに大きいことも明らかになるのだった。
「いろいろな会社を渡り歩くというのは、体力的にも精神的にも疲れるだろうね」
「疲れますね。でも、システム設計で派遣されている男性なんかに比べると、ずっと楽ですよ。そういう人たちは、納期が迫れば、残業、徹夜は避けられませんもの。昼間はコンピュータを派遣先の人が通常業務に使うので、ミスの点検や手直しはどうしても夜になりますから。残業が百七十時間にもなったって人を知ってます」
「それはすごいな」
「システムによっては、プログラムをプリントアウトするだけで二、三時間もかかる場合があるんです。そんな時は、コンピュータの前で寝袋にくるまって眠るんですって。不思議と、プリンターの音がやむと目がさめるそうですよ」
「ひどい話だなあ」誠は首を振った。「でも、その分ギャラはいいんじゃないの」
 だが千都留は苦笑していった。
「人件費が安くつくから、派遣社員のニーズが出てくるんですよ。いってみれば使い捨てライターみたいなものです」
「そんな悪条件に、よく耐えてるね」
「仕方ないです。食べるためですから」そういって千都留はレモンティーを啜《すす》った。彼女の唇が小さくすぼまるのを、誠はこっそり見下ろした。
「うちの会社はどうなのかな。やっぱり君たちを安く雇ってるのかな」
「東西電装さんは、とてもいいほうです。職場も奇麗で、気持ちがいいです」それから千都留は、少し眉《まゆ》を寄せた。「でも、ここで働けるのも、あとわずかなんですよ」
「えっ、そうなの?」
 誠は内心どきりとしていた。初耳だった。
「来週中に、決められていた分の仕事は、ほぼ終えられそうなんです。当初の契約でも半年間ということでしたし、最終チェックの仕事をするにしても、たぶん再来週いっぱいで終わりということになると思います」
「へえ……」
 誠は、空になった紙コップを握りつぶした。何かいわねばならないと思ったが、言葉が思いつかなかった。
「今度は、どういう会社に行くことになるのかな」千都留は唇に笑みを浮かべ、窓から外を眺めて呟《つぶや》いた。
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