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白夜行7-5

时间: 2017-01-17    进入日语论坛
核心提示: 手描きの地図に記されたビルは、新宿伊勢丹のすぐそばにあった。そこの三階に、民芸居酒屋という看板が上がっている。「どうせ
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 手描きの地図に記されたビルは、新宿伊勢丹のすぐそばにあった。そこの三階に、民芸居酒屋という看板が上がっている。
「どうせなら、もっと気のきいたところでやってくれりゃいいのにさ」エレベータに乗ってから、朱美が不服そうにいった。
「仕方ないよ。仕切ってるのが、おじさんだもん」
 千都留の言葉に、「それもそうか」と朱美はうんざりした顔で頷いた。
 店の入り口には、格子戸風の自動ドアがついていた。まだ七時前だというのに、早くも酔った客の大声が聞こえてくる。ネクタイを緩めたサラリーマンらしい男の姿が、ドア越しに見えた。
 千都留たちが入っていくと、「おう、こっちこっち」という声が店の奥から聞こえた。東西電装特許ライセンス部で付き合いのあった顔が並んでいる。彼等は、数脚のテーブルを独占していた。何人かは、すでに顔が赤くなっていた。
「酌なんかさせやがったら、テーブル蹴飛ばして帰っちゃおうぜ」千都留の耳元で朱美が囁《ささや》いた。実際、どんな職場に行っても、飲み会では酌を強要されることが多かった。
 まさか今日はそんなことはないだろうと千都留は踏んでいた。何しろ、彼女たちの送別会なのだ。
 お決まりの挨拶や乾杯が行われた。これも仕事のうちと諦めて、千都留は愛想笑いを浮かべた。ただし、帰りには気をつけなければと思っていた。社内の女性に妙なことをして騒がれたら面倒だが、派遣社員なら後腐れがないと思っている男が意外に多いことを、千都留はこれまでの経験で知っていた。
 高宮誠は、彼女の斜め向かいに座っていた。時折料理を口に運びながら、中ジョッキに入った生ビールを飲んでいる。ふだんでも口数の多いほうではない彼は、今日も人の話の聞き役に回っていた。
 その彼の視線が、ちらりちらりと自分に向けられているように千都留は感じた。それで彼女が彼のほうを見ると、すっと目をそらせてしまう――そんなふうに思われた。
 まさか、自意識過剰だよ、と千都留は自分にいってきかせた。
 いつの間にか朱美の結婚の話になっていた。多くの男性社員が彼女を落とそうとしていた、というお決まりのジョークが、少し酔った係長の口から発せられた。
「こんな激動の年に結婚しちゃって、この先どうなるのか心配です。男の子ができたら、是非阪神タイガースにあやかって、トラオと名付けたいと思います」朱美もアルコールが回ったのか、こんなことをいって皆を笑わせていた。
「そういえば、高宮さんも結婚されるようですね」声がぎこちないものになるのを気をつけながら、千都留は訊いた。
「うん、まあ……」高宮は、少し答えにくそうにした。
「明後日だよ、明後日」千都留の正面に座っている成田という男が、高宮誠の肩を叩きながらいった。「明後日で、こいつの花の独身生活もおしまいってわけだ」
「おめでとうございます」
 ありがとう、と高宮は小声で答えた。
「こいつはね、あらゆる面で恵まれている男なんだ。だから、おめでとうなんていってやる必要は全然ないんですよ」成田が、ややもつれた口調でいった。
「別に恵まれてませんよ」高宮は、困った顔をしながらも、歯を見せた。
「いいや、おまえは恵まれすぎている。ねえ、三沢さん、ちょっと聞いてくださいよ。こいつは俺よりも二歳も下のくせに、もうマイホームを手に入れてるんだ。こんなことが許されますか」
「マイホームじゃないですよ」
「マイホームじゃないか。家賃を払わなくていいマンションなんだろ? それがマイホームじゃなくて、何なんだよ」成田は唾を飛ばして食って掛かった。
「あれはお袋の名義なんです。そこに住まわせてもらうだけです。だから、ただの居候みたいなものですよ」
「ほらね、おかあさんがマンションを持っている。すごいと思いませんか」成田は千都留に同意を求めながら、自分の猪口《ちょこ》に酒を注いだ。それを一気に飲み干してから、また話を続けた。「しかもね、ふつうマンションを持っているといったら、2DKとか3LDKの部屋があるという意味に解釈しちゃうでしょ? ところが、こいつのところは違うんだなあ。マンションの建物全部を持ってる。で、そのうちの一部屋をいただいちゃったわけなんです。こんなこと、許されますか?」
「もう勘弁してくださいよ」
「いいや、許さんぞ。おまけにね、今度こいつがもらう嫁さんってのが、すごい美人なんだ」
「成田さん」高宮は、さすがに弱りきった表情を見せた。何とか成田を黙らせようと、彼の猪口に酒を注いでいる。
「そんなに奇麗な人なんですか」千都留は成田に尋ねた。興味のあることだった。
「奇麗、奇麗。あれは女優になってもおかしくないよ。それに、お茶だとかお華だとかも出来るんだろ?」成田が高宮に訊いた。
「まあ、一応」
「すごいよねえ。英語もぺらぺらだっていってたよな。ちくしょう、どうしておまえのところにばっかり、そういう幸運が舞い込むんだよ」
「まあ待て、成田。人間、そう良いことばかりは続かんさ。そのうちにおまえのほうに幸運が転がりこむこともあるさ」端の席に座っている課長がいった。
「へえ、そうですかねえ。それは一体いつなんです」
「まあ、来世紀半ばぐらいには、何とかなるんじゃないか」
「そんな五十年も先じゃ、生きてるかどうかもわからんじゃないですか」
 成田の言葉に全員が笑った。千都留も笑いながら、そっと高宮のほうを窺《うかが》った。すると一瞬だけ二人の目が合った。その時、彼が何かを伝えたがっているように千都留には思えた。だが、それも錯覚に違いなかった。
 送別会は九時にお開きとなった。店を出る時、千都留は高宮を呼び止めた。
「これ、御結婚のお祝いです」彼女はバッグから小さな包みを取り出した。昨日の帰りに買ったものだ。「今日、会社でお渡ししようと思ってたんですけど、チャンスがなくて」
「そんな……よかったのに」彼は包みを開いた。中に入っていたのは、ブルーのハンカチだった。「ありがとう、大事にするよ」
「半年間、どうもありがとうございました」彼女は前で手を揃え、頭を下げた。
「僕は何もしていないよ。それより、君は今後どうするの?」
「しばらく実家でのんびりするつもりです。明後日、札幌に帰るんです」
「ふうん……」彼は頷きながら、ハンカチを包みに戻した。
「高宮さんたち、赤坂のホテルで式をお挙げになるんでしょう? でも、その時にはたぶんあたし、北海道にいると思います」
「朝早く出発するんだね」
「明日の夜は品川のホテルに泊まる予定なんです。だから、早く出発しょうと思って」
「どこのホテル?」
「パークサイドホテルですけど」
 すると高宮は、また何かいいたそうな顔をした。しかしその時、入り口から声がした。「おい、何やってるんだ。もうみんな下に降りちゃったぞ」
 高宮は軽く手を上げると、歩きだした。彼の後に続きながら、もうこの人の背中を見つめることはないのだなと、千都留は思った。
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