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白夜行10-8

时间: 2017-01-17    进入日语论坛
核心提示: 二日後、今枝は再び大阪に来ていた。その目的の一つは、ある女性に会うことだった。その女性のことは、前回唐沢家の近所で聞き
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 二日後、今枝は再び大阪に来ていた。その目的の一つは、ある女性に会うことだった。その女性のことは、前回唐沢家の近所で聞き込みをした時に偶然知った。
「唐沢さんのお嬢さんのことやったら、モトオカさんのところの娘さんが知ってはるかもしれませんわ。清華女子に通ってたと聞いたことがありますから」こう教えてくれたのは、小さなパン屋のおばさんだった。
 今枝はその女性の年齢を訊いてみた。パン屋のおばさんはさすがに首を捻《ひね》った。
「唐沢さんのお嬢さんと同い年ぐらいやないかと思うんですけど、はっきりしたことはちょっと……」
 元岡|邦子《くにこ》というのが、その女性の名前だった。そのパン屋に時々来るという。大手不動産会社と契約しているインテリアコーディネーターだということまで、おばさんは知っていた。
 東京に帰ってから、彼はその不動産会社に問い合わせてみた。いくつかの手順が必要だったが、最終的には元岡邦子と電話で話ができた。
 今枝は自分のことをフリーライターだといった。ある女性向け雑誌に載せる記事の取材をしているのだと説明した。
「じつは今度、名門女子校出身者の自立度、という特集を組もうということになったんです。それで東京や大阪の女子校出身で、現在ばりばりと仕事をこなしておられる方を探していたところ、ある人が元岡さんのことを教えてくださったんです」
 元岡邦子は電話口で意外そうな声をあげた。そんなあたしなんか、と謙遜の言葉を漏らした。しかしまんざらでもない様子が伝わってきた。
「一体誰があたしのことを?」
「申し訳ありませんが、それはいえないんです。約束でしてね。それよりええと、元岡さんは清華女子学園を何年に御卒業ですか」
「あたしですか? 高等部を出たのが五十六年ですけど」
 今枝は心の中で歓声を上げた。期待通り、唐沢雪穂とは同級生ということになる。
「すると唐沢さんを御存じじゃないですか」
「カラサワさん……唐沢雪穂さん?」
「そうです、そうです。御存じなんですね」
「ええ、同じクラスになったことはありませんけど。彼女が何か?」元岡邦子の声になぜか警戒の色が表れた。
「あの方のことも取材する予定なんですよ。唐沢さんは現在東京でブティックを経営しておられましてね」
「そうなんですか」
「ええとそれで」今枝は声に力を込めていった。「小一時間ほどで結構ですから、一度お目にかからせていただくわけにはいきませんか。現在のお仕事を含めて、ライフスタイルなどについて、お話を聞かせていただけるとありがたいのですが」
 元岡邦子は少し迷ったようだが、仕事に支障のない時ならば構わないと答えた。
 
 元岡邦子の勤務先は、地下鉄御堂筋線|本町《ほんまち》駅から徒歩で数分のところにあった。俗に船場《せんば》と呼ばれる大阪市の中央部である。問屋街、金融街で知られるだけあって、ビジネスビルが林立している。バブルが弾けたなどといわれているが、歩道を行くビジネスマンやウーマンたちは、誰も皆一秒を惜しむように早足だった。
 不動産会社が所有するビルの二十階が、『デザインメイク』という会社の事務所になっていた。今枝は地下一階にある喫茶店で元岡邦子を待った。
 ガラス製の掛け時計が午後一時五分を示した時、白いジャケットを着た女性客が入ってきた。やや大きめの眼鏡をかけている。女性にしては身長が高い。電話で聞いていた特徴を、すべて満たしていた。おまけに足が細く、なかなかの美人でもあった。
 今枝は立ち上がり、彼女を迎えた。そして挨拶しながらフリーライターの肩書きがついた名刺を差し出した。名前も無論偽名である。
 その後で東京で買った菓子の包みを出した。元岡邦子は恐縮しながら受け取った。
 彼女はミルクティーを注文してから席についた。
「お忙しいところをすみません」
「いえ。それより、あたしのことなんか取材する価値があるんですか」元岡邦子は釈然としない様子で訊いた。当然のことながら、アクセントは関西弁だ。
「ええ、もう、いろいろな方のお話を聞きたいと思っているんです」
「その記事って、実名が出るんですか」
「原則的には仮名を使います。もちろん実名が御希望ならばそういうふうにも……」
 いえ、と彼女はあわてて手を振った。「仮名で結構です」
「では早速ですが」
 今枝は筆記具を取り出し、『名門女子校出身者の自立度を検証する』という記事にふさわしそうな質問を始めた。新幹線の中で考えてきたものだ。元岡邦子は嘘の取材とも知らず、一つ一つ真面目に答えてくれた。その様子を見ていると今枝は何だか申し訳なくなり、せめて真剣に聞くことにした。ユーザーがインテリアコーディネーターを利用するメリットについての話や、不動産会社が彼女らの働きによって得る副次的利益は意外に少なくないことなどは、聞いていて損のない内容ではあった。
 約三十分で一通りの質問は終わった。元岡邦子のほうも、一息つくといった感じでミルクティーを口元に運んだ。
 今枝は、唐沢雪穂の話題を出すタイミングを計っていた。先日の電話で伏線は張ってある。だが不自然になってはいけなかった。
 すると元岡邦子のほうからこんなことをいいだした。
「唐沢さんのことも取材するとおっしゃってましたよね」
「ええ」意表をつかれた思いで今枝は相手の顔を見返した。
「ブティックを経営しているとか」
「はい。東京の青山でね」
「ふうん……がんばってるんですね」元岡邦子は目をあらぬ方向にそらせた。少し表情が固くなっている。
 今枝の頭の中で直感が働いた。この女性は唐沢雪穂に対して、あまりいい印象を持っていないのではないか、というものだった。ならば好都合だった。昔の雪穂について尋ねるにしても、本音を語ってくれそうにない相手では意味がない。
 彼は上着のポケットに手を入れながら、「あの、煙草を吸わせていただいてもよろしいでしょうか」と訊いた。ええ、どうぞ、と彼女はいった。
 マルボロをくわえ、ライターで火をつけた。ここからは雑談だ、というポーズを示しているつもりだった。
「唐沢さんのことですがね」今枝はいった。「ちょっと問題が出てきまして、頭を悩ませているんです」
「何か?」元岡邦子の表情に変化があった。明らかに関心を持っている。
「大したことではないのかもしれないのですが」今枝は灰皿に灰を落とした。「人によっては、あの人のことをあまり良くいわない場合があるんです」
「良くいわないって?」
「まあ、あの若さで店を何軒か経営しているわけですからね、人に妬《ねた》まれることはあると思うんですよ。それに実際、そうそう上品なことばかりをしてきたわけでもないでしょうしね」今枝は、ぬるくなったコーヒーを一口飲んだ。「要するにまあ、お金に汚いとか、商売のためには平気で人を利用するとか、そういったことなんですけどね」
「へええ」
「こちらとしては若き女性実業家ということで取り上げたいんですがね、人間的にあまり評判が良くないとなると、見合わせたほうがいいんじゃないかという声も編集部内で出てくるわけです。それで悩んでいるところでして」
「雑誌のイメージにもかかわりますしね」
「そうです、そうです」今枝は頷きながら元岡邦子の表情を観察した。かつての同級生のことを悪くいわれて不快に感じている、というふうには見えなかった。
 今枝は短くなった煙草を灰皿の中で揉み消し、すぐにまた新しい煙草に火をつけた。煙が相手の顔にかからぬよう気をつけながら吸った。
「元岡さんは、彼女とは中学と高校が同じなんでしたね」
「そうです」
「ではその頃の記憶で結構なんですけど、どうなんですかね、あの方は」
「どう、といわれますと?」
「つまり、そういうところがありそうな人でしたか。これは記事にはしませんから、率直な御意見をお聞かせいただきたいんですけど」
「さあ」元岡邦子は首を傾げた。自分の腕時計をちらりと見る。時間を気にしているようだ。
「電話でもいいましたけど、あたしは彼女とは同じクラスになったことがないんです。ただ、唐沢さんは有名人でした。他のクラスの人間もそうですけど、別の学年の人たちも、彼女のことは知っていたんじゃないかと思います」
「どうして有名だったのですか」
「そりゃあ」といって彼女は瞬《まばた》きをした。「あの容姿だから、やっぱり目立つでしょう? ファンクラブみたいなのを作ってた男の子たちもいるし」
「ファンクラブねえ」
 考えられないことではないなと今枝は雪穂の顔を思い出していた。
「成績も、かなり優秀だったみたいですよ。中学時代に彼女と同じクラスだった友達がいってましたから」
「才媛というわけですね」
「でも性格とか人間性については知りません。話したことも、たぶんないと思うし」
「彼女と同じクラスだったというお友達の評価はどうなんですか」
「その子は特に唐沢さんの悪口はいってませんでした。あんなふうに美人に生まれたらラッキーだって、冗談半分に妬みみたいなことをいってたことはありますけど」
 元岡邦子の台詞《せりふ》に微妙なニュアンスが込められていたのを今枝は聞き逃さなかった。
「その子は……とおっしゃいましたね」彼はいった。「ほかの人で、彼女のことをあまり良くいってない人がいるのですか」
 言葉尻を捉えられたことが不本意そうに、元岡邦子はかすかに眉を寄せた。だが今枝は、それが決して彼女の本音でないことを見破っていた。
「中学時代、彼女について妙な噂が流れたことがあります」元岡邦子はいった。声が極端に低くなっていた。
「どういう噂ですか」
 彼が訊くと、彼女は一旦疑わしそうな目を向けてきた。
「本当に記事にはしませんよね」
「もちろん」彼は深く頷いた。
 元岡邦子は一つ息を吸ってから口を開いた。
「彼女は経歴詐称をしている、という噂でした」
「経歴詐称?」
「本当はひどい家庭で生まれ育ったくせに、そのことを隠してお嬢様ぶっている、というわけです」
「ちょっと待ってください。それは彼女が小さい頃、親戚の女性の養女になったことを指しているわけですか」
 それならば大したことではない、と今枝は思った。
 すると元岡邦子はほんの少し身を乗り出した。
「そうなんですけど、問題は生まれ育った家のほうなんです。噂によれば彼女の実のお母さんは、男性と特別な関係になることでお金を稼いでいた、ということでした」
「ははあ……」今枝は敢えて大げさには驚かないでいた。「誰かの愛人だったということですか」
「かもしれません。でも相手は複数だったということです。噂によれば、ですけど」
 噂、という部分を元岡邦子は強調した。
 しかも、と彼女は続けた。「相手の男性の一人が殺されたそうなんです」
 えっ、と今枝は声を出していた。「本当ですか」
 彼女はこっくりと頷いた。
「それで唐沢さんの実のお母さんも警察の取り調べを受けたということでした」
 今枝は返事をするのを忘れ、じっと煙草の先端を見つめた。
 例の質屋殺しだ、と思った。警察が西本文代に目をつけたのは、単に彼女が質屋の馴染み客だったからだけではないらしい。その噂が真実であったならば、だが。
「あたしがこんな話をしたことは、誰にもいわないでくださいね」
「いいません。大丈夫です」今枝は彼女に笑いかけた。だがすぐ真顔に戻った。「でもそんな噂が流れたら、結構大騒ぎになったんじゃないんですか」
「いえ、それはさほどでもありませんでした。噂といいましたけど、実際にはごく限られた範囲だけで広まった話ですから。噂を流した張本人もわかっていましたし」
「えっ、そうなんですか」
「その人は、知り合いが唐沢さんの生まれ育った家のすぐ近所に住んでいたとかで、今いったようなことを知ったそうです。あたしはその人とはあまり親しくないんですけど、友達を通じて聞いたんです」
「その人も清華女子学園の……」
「同級生でした」
「何という方ですか」
「それはちょっと……」元岡邦子は下を向いた。
「そうですね。失礼しました」今枝は煙草の灰を落とした。あまり詮索して不審に思われることは避けたかった。「でもそういう噂を流すというのは、どういうことなんでしょうね。本人の耳に入ることは考えてなかったのかな」
「その人は当時、唐沢さんに対して敵対心を持ってたみたいです。その人も才媛と呼ばれてましたから、ライバル視したのかもしれません」
「女子校らしいエピソードですね」
 今枝がいうと、元岡邦子は白い歯を覗かせた。
「今から考えると本当にそうですね」
「その二人のライバル関係は結局どうなったのですか」
「それが……」といった後、彼女は少し沈黙し、徐《おもむろ》に口を開いた。「ある事件がきっかけで仲良くなってしまったんです」
「ある事件、といいますと?」
 元岡邦子は周囲を見回すように視線を動かした。彼等の周りのテーブルには客がいなかった。
「その時を流した女の子が襲われたんです」
「襲われた?」今枝は身を乗り出していた。「と、いいますと?」
「その子が長い間学校を休んでいたことがあるんです。交通事故に遭ったという話でしたけど、実際には学校の帰りに襲われて、それで心身のショックから立ち直れなくて休んでいたそうです」
「それは、あの、暴行されたということですか」
 元岡邦子は首を振った。
「詳しいことはわかりません。レイプされたらしいという噂も流れましたけど、未遂だったという話もあるんです。ただ襲われたのは事実のようです。事件現場近くに住んでいた人が、警察が来ていろいろと調べていたのを見たといってましたから」
 何かが今枝の頭の中で引っかかった。聞き流すべき話ではないと思った。
「その事件をきっかけに、その人と唐沢さんが親しくなったとおっしゃいましたね」
 元岡邦子は頷いた。
「倒れている彼女を発見したのが、唐沢さんだったんです。その後も唐沢さんはお見舞いに行ったりして、いろいろと面倒をみていたらしいです」
 唐沢雪穂が――。
 今枝の思考を刺激するものがあった。平静を装っていたが、全身が熱くなるのを感じていた。
「発見したのは、唐沢さんお一人だったんでしょうか」
「いえ、お友達と二人だったと聞きましたけど」
 元岡邦子の答えに、今枝は唾を飲み込みながら頷いた。
 
 夜は梅田駅のそばにあるビジネスホテルに泊まることにした。今枝はマイクロカセットレコーダーから聞こえる元岡邦子の話を、レポート用紙にまとめていった。彼女は、彼が上着の内ポケットにレコーダーを仕込んでいたことには気づかなかったようだ。
 今日からしばらくの間、元岡邦子は自分の話が載るはずの女性雑誌を買い続けるかもしれないな、と今枝は思った。少し気の毒だが、ささやかな夢を与えたと思うことにした。一区切りしたところで彼はナイトテーブル上の電話に手を伸ばした。手帳を見ながら番号ボタンを押す。
 呼び出し音が三回鳴った後、相手が出た。
「もしもし、篠塚さんですか。……ええ、そうです、今枝です。今、大阪に来ているんですよ。……はい、例の調査でね。じつは、どうしても会っておきたい人物がいるので、連絡を取ろうと思うんです。それで、あなたに連絡先を教えていただこうと思いまして」
 その人物の名前を今枝はいった。
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