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「気ちがい」の錯覚(5)

时间: 2023-12-01    进入日语论坛
核心提示:「それは恐ろしいことでした。気の狂いそうな発見でした。花ちゃんを殺したのは和尚さんであり、雪枝さんを殺したのは村長である
(单词翻译:双击或拖选)

「それは恐ろしいことでした。気の狂いそうな発見でした。花ちゃんを殺したのは和尚さ

んであり、雪枝さんを殺したのは村長である。あまり気ちがいじみて、自分でもそれを信

じるのが怖かったくらいです。しかしいかにぼくの感傷がそれを拒否しようとしても、厳

然たる事実はうごかすことはできません。和尚が花ちゃんを殺したのだ。そして村長が雪

枝さんを殺したのである。と、すれば月代さんを殺したのは幸庵さんではあるまいか……

そう考えていたとき、ぼくはまったく気が狂いそうでした。だが……月代さん殺しが、幸

庵さんであってはいけないという根拠はどこにもなかった。いやいや、逆に、幸庵さん以

外に、月代さんを殺すチャンスを持ちえたひとはひとりもいない。……」

「しかし、金田一さん、それはチト無理ですよ」

 磯川警部がはじめて口をひらいた。

「なるほど。幸庵さんには月代ちゃんを殺すチャンスはあったかもしれない。しかし、肉

体的にそれは不可能ですよ。なぜって幸庵さんは左腕を折って用をなさなくなっている。

それだのに月代さんは、日本手ぬぐいで絞め殺されたのです。片手でひとを絞殺するとい

うことは……」

「けっして不可能じゃありませんよ、警部さん」

 耕助はもの憂い声で、

「あの手ぬぐいは、御存じのとおり、反たんのまま染めてあるのです。そして、月代さん

の向かっていた祭壇の右側にはいろとりどりの吹き流しのようなものがぶらさがっていま

した。ホラ、鈴と猫とがむすびつけてあったあれです。あの吹き流しのなかへ一本、つな

ぎ染めの手ぬぐいをまぜておいても気のつくはずはありません。幸庵さんはその手ぬぐい

の端を右手で握って、祈禱に夢中になっている月代さんのうしろへ忍びより、すばやく首

に巻きつける。そして、うんとそれをひっぱれば、……手ぬぐいの他の端が鴨かも居いに

固定しているのだから、片手でも十分絞め殺すことができるのです。そして、月代さんが

絶息したところを見計らって、手ぬぐいを適てき宜ぎの長さに切っておく。警部さん、あ

なたはあの手ぬぐいが、かなりよごれていたにもかかわらず、切り口だけが新しかったこ

とを覚えていらっしゃるでしょう。こうして片腕の幸庵さんが、日本手ぬぐいでひとを絞

め殺すという、不可能犯罪ができあがったのです」

 日は暮れた。シーンとしずまりかえった書院のなかに、磯川警部の荒っぽい息づかいば

かりが、切ないほどに耳につく。警部はねっとり吹き出した、額の汗をぬぐいながら、

しゃがれ声で、やっとこれだけのことをいった。

「いや、どうも! いったい、これはどういうことになるんだ。和尚といい、村長とい

い、幸庵さんといい、それじゃ獄門島にゃ犯罪の天才が集まっているというわけか」

「いいえ、それはちがいます」

 耕助がしずかにそれを訂正した。

「さっきもいったとおり、和尚さんも、幸庵さんも、単なる殺人機械にすぎないんです。

この恐ろしい三つの殺人事件の考案者は、ほかでもない、亡くなった嘉右衛門隠居なので

す。警部さん、あなたもおききになっているでしょう。嘉右衛門さんは死ぬまえに、中風

で倒れて左がきかなくなっていた。それから思いついた月代さん殺しの方法を、幸庵さん

はそのままうけつぎ、わざと左の腕を折ったのです。だが、そのことについては、和尚さ

んが詳しく語ってくださるでしょう」

 耕助はそこでポッツリことばをきった。

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