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エピローグ 金田一耕助島を去る

时间: 2023-12-01    进入日语论坛
核心提示:エピローグ 金田一耕助島を去る 耕助はいま島を去ろうとしている。船着き場まで、清水さんと竹蔵と、床屋の清公が送ってきた。
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エピローグ 金田一耕助島を去る
 耕助はいま島を去ろうとしている。船着き場まで、清水さんと竹蔵と、床屋の清公が
送ってきた。このごろの日ひ和よりぐせか、きょうもまた細かい雨がけむっている。
「清水さん、村長の行方はまだわかりませんか」
「わかりません。ひょっとすると、どこかで人知れず、自殺したのじゃないかと、島のも
んは取り沙ざ汰たしています」
「そうですか」
 それきり話はとだえて、一同は黙々として、船着き場に立っている。耕助はいま、木枯
らしにふかれるようなわびしさを抱いている。
 いい知れぬ悲哀が、胸のうちにみちている。
 小こ糠ぬか雨あめは、ふりしきる。霏ひ々ひとして一同のうえにふりそそぐ。……
「なんでえ、なんでえ、なんでえ!」
 突然、床屋の清公が啖たん呵かをきった。
「なんだってみんな、こんなにしょげこんでいるんだ。旦だん那ながおたちになるという
んだ。もっとうきうきできねえものか。旦那も旦那だ。なにをそのようにしずんでいなさ
るんだ。旦那、島にいてこそ早苗さんもべっぴんだが、東京へ出てごらんなせえ、あんな
なあザラだ。なにもそんなにしょげることはねえやな。ほい、竹蔵さん、早苗さんにゃ内
緒だぜ」
 清公のことばはいくらか図星をさしている。昨日耕助は早苗さんにむかって、東京へ出
る気はないかと誘うてみた。この唐突な申し出に、早苗さんはびっくりして、つぶらな眼
をみはったが、やがてそのことばのうらにある意味をくみとると、しだいに眼を伏せ、そ
してつぶやくようにこんなことをいった。
「いいえ、あたしはやっぱりここに残ります。兄さんも本家の兄さんも死んでしまって、
これからさき、どんなむつかしいことになりますか、それはあたしもよく知っています。
島も革命ならば日本も革命、網元だとて昔の甘い夢は見られますまい。でも、むつかしけ
ればむつかしいほど、あたしは踏みとどまらねばなりません。ちかごろ島にも復員で、お
いおい若いひとがかえってきます。そのなかからよいお婿さんをさがし出して、かなわぬ
までも本鬼頭を守りそだてていきましょう。そうでもしなければ、お祖父さまの魂は、こ
の家の棟むねをはなれることができないでしょう。島で生まれたものは島で死ぬ。それが
さだめられた掟おきてなのです。でも……ありがとうございました。もうこれきりお眼に
かかりません」
 早苗さんは顔をそむけて、よろめくように立ち去った。……
「竹蔵さん、本鬼頭をたのみます。和尚も村長も幸庵さんも、みんなみんないなくなった
のだから……」
「旦那、わたしゃ骨が舎しや利りになっても……」
 竹蔵は袖で眼をこすった。
 やがてなじみの白竜丸が入ってくる。
「じゃ、皆さん、ごきげんよう」
「旦那、お元気で」
「金田一さん、ところがきまったら知らせてください。村長がつかまったら知らせます」
 艀はしけが出ようとするところへ、あわただしく桟さん橋ばしをかけおりてきたものが
ある。復員姿の鵜飼章三で、傘かさもささずにぬれそぼれているのが哀れである。
「あっはっは、鵜飼さん、おまえとうとうお払いばこになったね。さりとは分鬼頭のおか
みも現金な」
 床屋の清公の毒舌である。
 鵜飼は顔を真っ赤にして、消えてなくなりそうに肩をつぼめ、そそくさと艀のなかへと
びうつった。
(そうだ、それでいいのだ。ここは他国もののながく住むべきところではない)
 艀がしずかに漕こぎ出すとき、ゆるやかに霧雨をついて、鐘の音がながれてきた。
 了沢君がわかれのあいさつに、鐘かねをついてくれるのである。恐ろしい思い出のある
あの鐘を。……
 耕助は艀のなかにつと立ち上がると、
「南無……」
 と、霧雨けぶる獄門島にむかって合掌した。
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