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ねこそぎ盗難

时间: 2023-09-13    进入日语论坛
核心提示:ねこそぎ盗難中村警部は、いったん警視庁にかえって、相談したうえ、二十人の警官で五日間、夜も昼も、美術館をみまわることにな
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ねこそぎ盗難


中村警部は、いったん警視庁にかえって、相談したうえ、二十人の警官で五日間、夜も昼も、美術館をみまわることになりました。
陳列室が五つしかない、小さい美術館ですから、これだけの人数でじゅうぶんなのです。
ひとつの陳列室にふたりずつ見はりに立ち、のこる十人は、美術館のまわりを、あるきまわっているのです。
しかし、怪人は、いっこうに、あらわれません。
二十人の警官隊におそれをなして、ぬすむことを、あきらめたのでしょうか。いやいや、まだゆだんはできません。きょうは四日めです。あとに一日のこっているのです。
そして、とうとう、その五日めとなりました。昼間は、なにごともなく、夜がきました。
美術館の館長室では、古山博士と中村警部とが、むかいあって、いすにかけていました。
「いま七時です。もし、怪人が約束をまもるとすれば、あと五時間のうちに、なにごとかが、おこるでしょう。あと五時間です。」
古山博士が、まるで、それをまちかねているように、つぶやきました。
「あてになりませんね。五日間なんていっておいて、その五日がたってしまって、われわれがゆだんしたときに、やってくるのではありませんか。だから、この見はりは、とうぶん、とくわけにはいきませんね。」
「いや、あいつは、約束をまもるでしょう。中村さんは、あいつにであったことがないので、おわかりにならないでしょうが、わたしは、この目で、いろいろなふしぎを見ているのです。二十人ぐらいの警官では、じつは心ぼそいのですよ。きっと、やってくるとおもいます。」
古山博士は、そういって、中村警部の顔を、じっと見つめるのでした。
そのとき、ドアがひらいて、小使さんが、はいってきて、ふたりの前のテーブルにコーヒーをならべました。
「あ、コーヒーをいれたのか。それは気がきいたね。わたしたちばかりでなく、おまわりさんたちにも、あげてください。外にいる人にも、のこりなくね。」
博士がいいますと、小使さんはニヤリとわらって、
「はい、わかりました。ちゃんと、用意ができております。」
とこたえて、そのまま、部屋をでていきました。
古山博士と中村警部は、そのコーヒーを、すっかりのんでしまいましたが、しばらくすると、みょうなことがおこりました。
中村警部が、いすにかけたまま、コックリ、コックリと、いねむりをはじめたのです。
古山博士は、それを見ると、立ちあがって、警部の肩に手をかけて、ゆりうごかしながら、
「中村さん、どうなすった? 昼間のつかれで、ねむくなったのですか。中村さん、中村さん……。」
と、いくらよんでも、警部は目をさましません。
博士はそれをたしかめると、なぜか、みょうな笑いをうかべて、そのまま、部屋をでていってしまいました。
とりのこされた中村警部は、いつまでも、ねむっていました。もう九時をすぎたのに、まだねむっています。そして、夢をみていました。おそろしい夢です。
砂漠のように、見わたすかぎり、なにもない地面、その上にひろがる灰色の空。そのひろいひろい地面から、ニョキニョキと、黒い気味のわるいものが、はえてくるのです。あちらからも、こちらからも、みるみる地面いっぱいにひろがって、かぞえきれないほど、黒い頭を、もたげてくるのです。
それは何百ともしれぬカニの怪人でした。それが地面からわきだして、こちらへあるいてくるのです。
中村警部は、にげだそうとしましたが、どうしたのか、足がすこしもうごきません。さけぼうとしても、声がでません。
そのうちに、むらがるカニ怪人が目の前に、せまってきました。そして、あの気味のわるい、カニの頭が、警部の顔の上に、のしかかってくるのです。
もがきにもがいているうちに、ふっと目がさめました。
「なあんだ、夢だったのか。」
やれやれ、夢でよかったとおもって、テーブルのむこうを見ると、古山博士がいすにもたれて、ぐっすり、ねむっているではありませんか。
「古山さん、おきてください。古山さん。」
そばへいって、からだをゆすぶると、博士は、やっと目をさましました。
「あっ、いつのまに、ねむったのかしら。」
と、ふしぎそうに、あたりを見まわしています。
「ぼくも、いままで、ねむっていたのですよ。どうもへんですね。ふたりが、そろって、いねむりをするなんて。」
「あなたもねむっていたのですか。すると、われわれだけじゃないかもしれませんよ、ねむらされたのは……。」
「えっ、ねむらされたって。」
「そうです。ともかく、しらべてみましょう。ひょっとすると、たいへんなことが、おこっているかもしれない。」
博士は、あわただしく、部屋をかけだしていきました。中村警部も、そのあとを、おいました。
博士は、第一の陳列室にとびこみました。
「あっ、やっぱり、そうだっ。」
ふたりのおまわりさんが、部屋のすみにたおれていました。いびきをかいて、ねむっているのです。
中村警部も、そこへはいってきて、いきなり、ねむっているおまわりさんのからだを、ゆすぶりました。
「おい、おきたまえ。いったい、どうしたんだ。」
ふたりの警官は、目をこすりながら、よろよろと、たちあがりました。
「見たまえ、陳列だなは、ぜんぶ、からっぽだっ。」
古山博士がさけびました。
その部屋には、六つの大きな陳列だなが、おいてあるのですが、それが、みんな、からっぽになっていたのです。
「あ、やられたっ。」
警官のひとりが、とんきょうな声をたてました。
「ほかの部屋も、しらべてみましょう。」
それから、博士と警部とは、第二、第三、第四、第五と、ぜんぶの陳列室をしらべましたが、どこも、第一の陳列室とおなじでした。
見はり番のおまわりさんはグウグウねむっていて、陳列だなは、みんな、からっぽになっていたのです。
「事務室へいってみましょう。館員がいるはずです。」
博士はそういって、かけだしました。事務室のドアをあけると、四人のわかい館員が、机の上に、うつぶせになって、グウグウねむっているではありませんか。
それから、外をしらべました。すると、美術館のまわりを見はっていた十人の警官も、みんな地面にころがって、ねむりこんでいたのです。
ききただしてみますと、ぜんぶの人が、小使のもってきたコーヒーを、のんでいることがわかりました。
「そうだ、あいつがあやしいぞ。」
古山博士が、さきにたって、小使室へかけこみました。しかし、そこは、もぬけのからでした。
それから、てわけをして、ほうぼうを、さがしましたが小使の姿は、どこにもみあたりません。にげだしてしまったのです。
「みんなをねむらしておいて、そのまに、美術品をもちだしたのですね。しかし、小使ひとりの力では、どうにもできないはずだが……。」
「そうです。あの美術品を、ぜんぶはこぶのには、すくなくとも、大型トラック三台は、いります。むろん小使ひとりの、しわざではありません。」
「じゃあ、あのカニ怪人たちが……。」
中村警部は、さっきの夢をおもいだして、ゾッとしました。
「やっぱり、ひとりや、ふたりじゃない。十人以上のカニ怪人が、やってきたのだ。」
あの気味のわるい、カニ頭の怪物が電灯のような目をギョロギョロさせて、陳列室の美術品をつぎつぎと、はこんでいったかとおもうと、なんともいえない、おそろしさでした。
そのあくる日の新聞には、岩谷美術館の、ねこそぎ盗難事件が、デカデカと書きたてられ、日本じゅうの人を、ふるえあがらせました。
それにしても、美術館の陳列品が、ひとつのこらず、きれいにぬすみさられるなんて、きいたこともない、ふしぎな事件でした。ほんとうに、ねこそぎ盗難事件にちがいありません。
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