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カニのぬけがら

时间: 2023-09-13    进入日语论坛
核心提示:カニのぬけがら「そうです。ぼくは、あいつらに、つかまえられたのです。」といって、ふっと、気がつきました。井上君は怪人の魔
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カニのぬけがら


「そうです。ぼくは、あいつらに、つかまえられたのです。」
といって、ふっと、気がつきました。
井上君は怪人の魔力によって、からだを消されていました。ですから、井上君の姿は、だれにも見えないはずです。
ところが、この紳士には、ちゃんと、井上君が見えているらしいではありませんか。
「おじさんぼくが見えるのですか。」
井上君は、へんなことを、たずねました。
「見えるとも。きみは、なかなか、つよそうな少年だよ。」
紳士は、にこにこわらって、こたえました。
では、カニ怪人の魔法がとけて、井上君のからだは、見えるようになっていたのでしょうか。なんだか、へんではありませんか。
しかし、それを、ふしぎがっているひまはありませんでした。
その紳士と、二言三言、はなしあったかとおもうと、井上君は、
「えっ!」
と、さけんで、うしろへ、たおれそうになりました。
それほど、びっくりしたのです。
それから、しばらく、ふたりは、ヒソヒソ話をつづけていましたが、いつまでもはなしていて、だれかにみつかっては、たいへんですから、ひとまず、わかれることにしました。
「もうすこし、ここに、がまんしていてください。ぼくひとりの力では、どうにもなりません。しかし、きっと、うまくいきます。ぼくたちには、明智先生や小林団長がついているのです。けっして、まけることはありません。」
井上君は、そういって、紳士をはげましておいて、秘密の部屋を出ました。そして、レンガのかくし戸を、もとのとおりにしめ、さっきの針金で錠をおろして、一階のじぶんの部屋にかえりました。
井上君は、すっかりめんくらっていました。地下室にとじこめられていた紳士が、じつに意外な人だったからです。また、消されたと信じていた、じぶんのからだが、消えていないこともわかりました。
妖星人Rのカニ怪人がいっそう、えたいのしれない、へんてこなものに、かんじられるのです。
この家の中は、自由に、あるきまわれますが、外へ出ることだけはできません。井上君は、いくども、にげだそうとして、しっぱいしているのです。
出入り口には、表も、うらも、ちゃんとカニ怪人が、番をしていますし、窓から、とびだそうとしても、みんな、鉄ごうしがはまっていて、どうすることもできません。
井上君は、上着をぬいで、ベッドに、よこたわりました。もう夜もふけていたからです。考えれば考えるほど、ふしぎなことばかりで、なかなか、ねむれません。
でも、昼間のつかれで、すこしウトウトしたかとおもうと、にわかに、家の外が、さわがしくなりました。
なんだろうと、ベッドをおりて、窓からのぞいてみました。そこからは、この家の門が見えるのです。
門の外に、自動車が、とまっているようです。それも一台ではなくて、二―三台とまっているらしいのです。
腕時計を見ると、もう十二時でした。
自動車から、おおぜいの人がおりて、門をはいっていきます。あたりは、まっくらですが、門灯の光で、かすかに見えるのです。
「あっ、カニ怪人だっ。」
そうです。はいってくるやつは、みんな、あの気味のわるい、カニの姿をしていました。しかも、てんでに、なにか、へんてこな荷物を、かついでいるのです。
四角い大きな額のようなもの、でこぼこした彫刻のようなもの、小さい箱のようなもの、それらが、みんな白いきれでくるんであるのです。
六―七人のカニ怪人が、いろんな形の、白い荷物をかついで、行列をつくって、家の中へはいってきます。まるで、おそろしい夢でも見ているような、ぶきみな光景でした。
怪人たちは、なんども、自動車へひっかえして、新しい荷物を、はこびました。ひっこしのような、さわぎです。それらの、白いきれでくるんだ荷物は、いったい、なんだったのでしょう。
井上君は、それをたしかめてやろうとおもいました。
そっと部屋を出て、玄関へ、いってみますと、そこに、白い荷物が、山のように、つんでありました。まだ、白いきれをとかないままです。
「あっ、いけないっ。」
井上君は、廊下の壁ぎわに立って、のぞいていたのですが、ひとりのカニ怪人が、こちらへやってくるのです。
井上君は、大いそぎで、廊下を、にげだしました。
ところが、二十歩もいかないうちに、むこうのまがりかどから、ヒョイとあらわれたものがあります。
べつのカニ怪人です。
井上君は、前とうしろから、はさみうちになっていました。さあ、こまった。どちらへにげても、つかまるばかりです。
ヒョイと、横を見ると、廊下にならんでいるドアのひとつが、二―三センチひらいていました。
なにを考えるひまもありません。井上君は、そのドアの中へ、とびこんで、ドアをしめて、息をころしていました。
ひとつの足音は、ドアの前を、とおりすぎました。しかし、もうひとつの足音は……、ピッタリと、ドアの前に、とまったではありませんか。そして、ドアのとってが、ぐるっとまわるのが見えました。カニ怪人が、この部屋へ、はいってくるのです。
井上君は、キョロキョロと、部屋の中を見まわしました。一方の壁に、大きなおしいれがついています。その中へ、かくれるほかはありません。
おしいれの、板のドアをひらいて、中へとびこみました。まっくらです。上から、なにかがぶらさがっていて、それが、顔に、ぶっつかってきました。ジャラジャラと、音がしました。
うすい金属が、何枚も、かさなったような、へんなものです。
しかし、そんなことを、考えているひまはありません。怪人にみつかりはしないかと、そのおそろしさで、いっぱいなのです。
あっ、たいへんです。怪人はおしいれのドアをひらきました。
井上君をみつけたのでしょうか。そして、つかまえようとしているのでしょうか。
井上君は、おしいれのおくに身をかくして、息をころして、ドアのほうを見つめていました。
すると、ドアの前に立ったカニ怪人が、ギョッとするようなことを、はじめたのです。
はさみになった両手で、自分の大きな頭を、グーッと、もちあげているではありませんか。
やがて、おどろいたことには、巨大なカニのこうらのような、あの頭の部分が、スッポリと、とれてしまいました。
それから、顔、手、足、胴体と、みんな、べつべつにとれるようになっていることが、わかりました。それらは、うすい金属で、できていて、ちょうちんのように、おりたためるのです。カニのこうらのような頭の部分も、四つか五つにおりたためるし、顔や手や足や胴体は、ちょうちんとおなじしかけで、小さくかさなりあってしまいます。顔のおそろしい目は、青いガラスの中にしかけた、電池でひかる豆電球なのです。
こうして、衣装をぬいだ下からは、いったい、なにがあらわれたのでしょうか。そこには、妖星人Rの、想像もできない奇怪ないきものが、うごめいていたのでしょうか。
いや、そうではありません。衣装の下から出てきたのは、意外にも、シャツとズボン下を身につけた地球の人類でした。しかも、日本人とそっくりの顔をしているのです。
ああ、なんということでしょう。妖星人のカニ怪人は、奇妙な衣装をつけた、日本人だったのです。
そこに井上少年がかくれているともしらず、その男は、いまぬいだカニ怪人の衣装を、おしいれの中のくぎに、ひっかけて、またドアをしめてしまいました。
このおしいれは、カニ怪人の衣装、つまり、カニのぬけがらを、かけておく場所だったのです。さっき、井上君がおしいれに、とびこんだとき、ジャラジャラと音をたてて、顔にぶっつかったのは、前から、そこにさがっていた、おなじようなカニの衣装だったのでしょう。それが三つも四つも、さがっていたのです。
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