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薤露行: 二 鏡(4)

时间: 2021-01-10    进入日语论坛
核心提示: 鏡の中なる遠柳(とおやなぎ)の枝が風に靡(なび)いて動く間(あいだ)に、忽(たちま)ち銀(しろがね)の光がさして、熱き埃(ほこ)り
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 鏡の中なる遠柳(とおやなぎ)の枝が風に(なび)いて動く(あいだ)に、(たちま)(しろがね)の光がさして、熱き(ほこ)りを薄く揚げ出す。銀の光りは南より北に向って真一文字にシャロットに近付いてくる。女は小羊を(ねら)(わし)の如くに、影とは知りながら(またた)きもせず鏡の(うち)()(つむ)る。十(ちょう)にして尽きた柳の木立(こだち)を風の如くに()け抜けたものを見ると、鍛え上げた(はがね)(よろい)に満身の日光を浴びて、同じ(かぶと)鉢金(はちがね)よりは尺に余る白き毛を、飛び散れとのみ(さんさん)と靡かしている。栗毛(くりげ)(こま)(たくま)しきを、(かしら)も胸も(かわ)(つつ)みて飾れる(びょう)の数は(ふる)い落せし秋の夜の星宿(せいしゅく)を一度に集めたるが如き心地である。女は息を凝らして眼を()える。
 曲がれる(どて)に沿うて、馬の首を少し左へ向け直すと、今までは横にのみ見えた姿が、真正面に鏡にむかって進んでくる。太き槍をレストに収めて、左の肩に(たて)を懸けたり。女は(えり)を延ばして盾に描ける模様を(しか)と見分けようとする(てい)であったが、かの騎士は何の会釈もなくこの鉄鏡を突き破って通り抜ける(いきおい)で、いよいよ目の前に近づいた時、女は思わず()()げて、鏡に向って高くランスロットと叫んだ。ランスロットは(かぶと)(ひさし)の下より耀(かがや)く眼を放って、シャロットの高き(うてな)を見上げる。爛々(らんらん)たる騎士の眼と、針を(つか)ねたる如き女の鋭どき眼とは鏡の(うち)にてはたと出合った。この時シャロットの女は再び「サー・ランスロット」と叫んで、忽ち窓の(そば)()け寄って(あお)き顔を半ば世の中に突き(いだ)す。人と馬とは、高き台の下を、遠きに去る地震の如くに馳け抜ける。
 ぴちりと音がして皓々(こうこう)たる鏡は忽ち真二つに割れる。割れたる(おもて)は再びぴちぴちと氷を砕くが如く(こな)微塵(みじん)になって(しつ)の中に飛ぶ。七巻(ななまき)八巻(やまき)織りかけたる布帛(きぬ)はふつふつと切れて風なきに鉄片と共に舞い上る。紅の糸、緑の糸、黄の糸、紫の糸はほつれ、千切(ちぎ)れ、解け、もつれて(つち)蜘蛛(ぐも)の張る網の如くにシャロットの女の顔に、手に、袖に、長き髪毛にまつわる。「シャロットの女を殺すものはランスロット。ランスロットを殺すものはシャロットの女。わが末期(まつご)(のろい)を負うて北の(かた)へ走れ」と女は両手を高く天に挙げて、朽ちたる木の野分(のわき)を受けたる如く、五色の糸と氷を(あざむ)く砕片の乱るる中に(たお)れる。

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