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薤露行:三 袖(1)

时间: 2021-01-10    进入日语论坛
核心提示: 可憐(かれん)なるエレーンは人知らぬ菫(すみれ)の如くアストラットの古城を照らして、ひそかに墜(お)ちし春の夜の星の、紫深き
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 可憐(かれん)なるエレーンは人知らぬ(すみれ)の如くアストラットの古城を照らして、ひそかに()ちし春の夜の星の、紫深き露に染まりて月日を経たり。()う人は(もと)よりあらず。共に住むは二人の兄と(まゆ)さえ白き父親のみ。
「騎士はいずれに去る人ぞ」と老人は穏かなる声にて訪う。
「北の(かた)なる仕合に参らんと、これまでは(むちう)って追懸けたれ。夏の日の永きにも似ず、いつしか暮れて、暗がりに路さえ(わか)れたるを。――乗り捨てし馬も恩に(いなな)かん。一夜の宿の情け深きに(むく)いまつるものなきを恥ず」と答えたるは、具足を脱いで、黄なる(ほう)に姿を改めたる騎士なり。シャロットを()せる時何事とは知らず、岩の(くぼ)みの秋の水を浴びたる心地して、かりの宿りを求め得たる今に至るまで、(ほお)(あお)きが特更(ことさら)の如くに目に立つ。
 エレーンは父の後ろに小さき身を隠して、このアストラットに、如何(いか)なる風の誘いてか、かく凛々(りり)しき壮夫(ますらお)を吹き寄せたると、折々は(つる)()せたる老人の肩をすかして、恥かしの(まつげ)の下よりランスロットを見る。菜の花、豆の花ならば戯るる(すべ)もあろう。偃蹇(えんけん)として澗底(かんてい)(うそぶ)く松が()には舞い寄る路のとてもなければ、白き胡蝶(こちょう)は薄き翼を収めて身動きもせぬ。
「無心ながら宿貸す人に申す」とややありてランスロットがいう。「明日(あす)と定まる仕合の催しに、(おく)れて乗り込む我の、何の(たれ)よと人に知らるるは興なし。新しきを(きら)わず、古きを辞せず、人の見知らぬ(たて)あらば貸し玉え」
 老人ははたと手を()つ。「望める盾を貸し申そう。――長男チアーは(さん)ぬる騎士の闘技に足を痛めて今なお(じょく)を離れず。その時彼が持ちたるは白地に赤く十字架を染めたる盾なり。ただの一度の仕合に(きずつ)きて、その創口(きずぐち)はまだ()えざれば、赤き血架は(むな)しく壁に古りたり。これを(かざ)して思う如く人々を驚かし給え」

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