日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 夏目漱石 » 正文

硝子戸の中(26)

时间: 2021-01-30    进入日语论坛
核心提示:二十六 益(ます)さんがどうしてそんなに零落(おちぶれ)たものか私には解らない。何しろ私の知っている益さんは郵便脚夫であった
(单词翻译:双击或拖选)

二十六


 (ます)さんがどうしてそんなに零落(おちぶれ)たものか私には解らない。何しろ私の知っている益さんは郵便脚夫であった。益さんの弟の庄さんも、(うち)(つぶ)して私の所へ(ころ)がり込んで食客(いそうろう)になっていたが、これはまだ益さんよりは社会的地位が高かった。小供の時分本町の鰯屋(いわしや)へ奉公に行っていた時、浜の西洋人が可愛(かわい)がって、外国へ連れて行くと云ったのを断ったのが、今考えると残念だなどと始終(しじゅう)話していた。
 二人とも私の母方の従兄(いとこ)に当る男だったから、その縁故で、益さんは(おとと)に会うため、また私の父に敬意を表するため、月に一遍ぐらいは、牛込の奥まで煎餅(せんべい)の袋などを手土産(てみやげ)に持って、よく訪ねて来た。
 益さんはその時何でも芝の(はず)れか、または品川近くに世帯を持って、一人暮しの呑気(のんき)な生活を営んでいたらしいので、(うち)へ来るとよく泊まって行った。たまに帰ろうとすると、兄達が寄ってたかって、「帰ると承知しないぞ」などと威嚇(おどか)したものである。
 当時二番目と三番目の兄は、まだ南校(なんこう)へ通っていた。南校というのは今の高等商業学校の位置にあって、そこを卒業すると、開成学校すなわち今日(こんにち)の大学へ這入(はい)組織(そしょく)になっていたものらしかった。彼らは夜になると、玄関に(きり)の机を並べて、明日(あした)下読(したよみ)をする。下読と云ったところで、今の書生のやるのとはだいぶ違っていた。グードリッチの英国史といったような本を、一節ぐらいずつ読んで、それからそれを机の上へ伏せて、口の内で今読んだ通りを暗誦(あんしょう)するのである。
 その下読が済むと、だんだん益さんが必要になって来る。庄さんもいつの間にかそこへ顔を出す。一番目の兄も、機嫌(きげん)の好い時は、わざわざ奥から玄関まで出張(でば)って来る。そうしてみんないっしょになって、益さんに調戯(からか)い始める。
「益さん、西洋人の所へ手紙を配達する事もあるだろう」
「そりゃ商売だから(いや)だって仕方がありません、持って行きますよ」
「益さんは英語ができるのかね」
「英語ができるくらいならこんな真似(まね)をしちゃいません」
「しかし郵便ッとか何とか大きな声を出さなくっちゃならないだろう」
「そりゃ日本語で間に合いますよ。異人だって、近頃は日本語が解りますもの」
「へええ、(むこう)でも何とか云うのかね」
「云いますとも。ペロリの奥さんなんか、あなたよろしいありがとうと、ちゃんと日本語で挨拶(あいさつ)をするくらいです」
 みんなは益さんをここまでおびき出しておいて、どっと笑うのである。それからまた「益さん何て云うんだって、その奥さんは」と何遍も一つ事を()いては、いつまでも笑いの種にしようと(たく)らんでかかる。益さんもしまいには苦笑いをして、とうとう「あなたよろしい」をやめにしてしまう。すると今度は「じゃ益さん、野中(のなか)一本杉(いっぽんすぎ)をやって御覧よ」と誰かが云い出す。
「やれったって、そうおいそれとやれるもんじゃありません」
「まあ好いから、おやりよ。いよいよ野中の一本杉の所まで参りますと……」
 益さんはそれでもにやにやして応じない。私はとうとう益さんの野中の一本杉というものを()かずにしまった。今考えると、それは何でも講釈か人情噺(にんじょうばなし)の一節じゃないかしらと思う。
 私の成人する頃には益さんももう(うち)へ来なくなった。おおかた死んだのだろう。生きていれば何か消息(たより)のあるはずである。しかし死んだにしても、いつ死んだのか私は知らない。

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: