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硝子戸の中(31)

时间: 2021-01-30    进入日语论坛
核心提示:三十一 私がまだ小学校に行っていた時分に、喜(き)いちゃんという仲の好い友達があった。喜いちゃんは当時中町(なかちょう)の叔
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三十一


 私がまだ小学校に行っていた時分に、()いちゃんという仲の好い友達があった。喜いちゃんは当時中町(なかちょう)の叔父さんの(うち)にいたので、そう道程(みちのり)の近くない私の所からは、毎日会いに行く事が出来(にく)かった。私はおもに自分の方から出かけないで、喜いちゃんの来るのを宅で待っていた。喜いちゃんはいくら私が行かないでも、きっと向うから来るにきまっていた。そうしてその来る所は、私の家の長屋を借りて、紙や筆を売る松さんの(もと)であった。
 喜いちゃんには父母(ちちはは)がないようだったが、小供の私には、それがいっこう不思議とも思われなかった。おそらく()いて見た事もなかったろう。したがって喜いちゃんがなぜ松さんの所へ来るのか、その訳さえも知らずにいた。これはずっと後で聞いた話であるが、この喜いちゃんの御父(おとっ)さんというのは、(むか)し銀座の役人か何かをしていた時、贋金(にせがね)を造ったとかいう嫌疑(けんぎ)を受けて、入牢(じゅうろう)したまま死んでしまったのだという。それであとに取り残された細君が、喜いちゃんを先夫(せんぷ)の家へ置いたなり、松さんの所へ再縁したのだから、喜いちゃんが時々(うみ)の母に会いに来るのは当り前の話であった。
 何にも知らない私は、この事情を聞いた時ですら、別段変な感じも起さなかったくらいだから、喜いちゃんとふざけまわって遊ぶ頃に、彼の境遇などを考えた事はただの一度もなかった。
 喜いちゃんも私も漢学が好きだったので、解りもしない(くせ)に、よく文章の議論などをして面白がった。彼はどこから聴いてくるのか、調べてくるのか、よくむずかしい漢籍の名前などを()げて、私を驚ろかす事が多かった。
 彼はある日私の部屋同様になっている玄関に上り込んで、(ふところ)から二冊つづきの書物を出して見せた。それは(たしか)に写本であった。しかも漢文で(つづ)ってあったように思う。私は喜いちゃんから、その書物を受け取って、無意味にそこここを()繰返(くりかえ)して見ていた。実は何が何だか私にはさっぱり解らなかったのである。しかし喜いちゃんは、それを知ってるかなどと露骨な事をいう性質(たち)ではなかった。
「これは太田南畝(おおたなんぼ)の自筆なんだがね。僕の友達がそれを売りたいというので君に見せに来たんだが、買ってやらないか」
 私は太田南畝という人を知らなかった。
「太田南畝っていったい何だい」
蜀山人(しょくさんじん)の事さ。有名な蜀山人さ」
 無学な私は蜀山人という名前さえまだ知らなかった。しかし喜いちゃんにそう云われて見ると、何だか貴重の書物らしい気がした。
「いくらなら売るのかい」と()いて見た。
「五十銭に売りたいと云うんだがね。どうだろう」
 私は考えた。そうして何しろ価切(ねぎ)って見るのが上策だと思いついた。
「二十五銭なら買っても好い」
「それじゃ二十五銭でも構わないから、買ってやりたまえ」
 喜いちゃんはこう云いつつ私から二十五銭受取っておいて、またしきりにその本の効能を述べ立てた。私には無論その書物が解らないのだから、それほど(うれ)しくもなかったけれども、何しろ損はしないだろうというだけの満足はあった。私はその夜南畝莠言(なんぽしゆうげん)――たしかそんな名前だと記憶しているが、それを机の上に載せて寝た。

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