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硝子戸の中(36)

时间: 2021-01-30    进入日语论坛
核心提示:三十六 私の長兄はまだ大学とならない前の開成校(かいせいこう)にいたのだが、肺を患(わずら)って中途で退学してしまった。私と
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三十六


 私の長兄はまだ大学とならない前の開成校(かいせいこう)にいたのだが、肺を(わずら)って中途で退学してしまった。私とはだいぶ年歯(とし)が違うので、兄弟としての親しみよりも、大人(おとな)対小供としての関係の方が、深く私の頭に()()んでいる。ことに(おこ)られた時はそうした感じが強く私を刺戟(しげき)したように思う。
 兄は色の白い鼻筋の通った美くしい男であった。しかし顔だちから云っても、表情から見ても、どこかに(けわ)しい(そう)を具えていて、むやみに近寄れないと云った風の(せま)った心持を(ひと)に与えた。
 兄の在学中には、まだ地方から出て来た貢進生(こうしんせい)などのいる頃だったので、今の青年には想像のできないような気風が校内のそこここに残っていたらしい。兄は或上級生に艶書(ふみ)をつけられたと云って、私に話した事がある。その上級生というのは、兄などよりもずっと年歯上(としうえ)の男であったらしい。こんな習慣の行なわれない東京で育った彼は、はたしてその(ふみ)をどう始末したものだろう。兄はそれ以後学校の風呂でその男と顔を見合せるたびに、きまりの悪い思をして困ったと云っていた。
 学校を出た頃の彼は、非常に四角四面で、始終(しじゅう)堅苦しく構えていたから、父や母も多少彼に気をおく様子が見えた。その上病気のせいでもあろうが、常に陰気臭(いんきくさ)い顔をして、(うち)にばかり引込(ひっこ)んでいた。
 それがいつとなく()けて来て、人柄(ひとがら)(おの)ずと柔らかになったと思うと、彼はよく古渡唐桟(こわたりとうざん)の着物に角帯(かくおび)などを()めて、夕方から宅を外にし始めた。時々は紫色(むらさきいろ)亀甲型(きっこうがた)を一面に()った亀清(かめせい)団扇(うちわ)などが茶の間に(ほう)()されるようになった。それだけならまだ好いが、彼は長火鉢(ながひばち)の前へ(すわ)ったまま、しきりに仮色(こわいろ)(つか)い出した。しかし宅のものは別段それに頓着(とんじゃく)する様子も見えなかった。私は無論平気であった。仮色(こわいろ)と同時に藤八拳(とうはちけん)も始まった。しかしこの(ほう)は相手が()るので、そう毎晩は繰り返されなかったが、何しろ変に無器用な手を上げたり下げたりして、熱心にやっていた。相手はおもに三番目の兄が勤めていたようである。私は真面目(まじめ)な顔をして、ただ傍観しているに過ぎなかった。
 この兄はとうとう肺病で死んでしまった。死んだのはたしか明治二十年だと覚えている。すると葬式も済み、待夜(たいや)も済んで、まず一片付(ひとかたづき)というところへ一人の女が尋ねて来た。三番目の兄が出て応接して見ると、その女は彼にこんな事を()いた。
「兄さんは死ぬまで、奥さんを御持ちになりゃしますまいね」
 兄は病気のため、生涯(しょうがい)妻帯しなかった。
「いいえしまいまで独身で暮らしていました」
「それを聞いてやっと安心しました。(わたくし)のようなものは、どうせ旦那(だんな)がなくっちゃ生きて行かれないから、仕方がありませんけれども、……」
 兄の遺骨の()められた寺の名を(おす)わって帰って行ったこの女は、わざわざ甲州から出て来たのであるが、元柳橋の芸者をしている頃、兄と関係があったのだという話を、私はその時始めて聞いた。
 私は時々この女に会って兄の事などを物語って見たい気がしないでもない。しかし会ったら定めし御婆(おばあ)さんになって、昔とはまるで違った顔をしていはしまいかと考える。そうしてその心もその顔同様に(しわ)が寄って、からからに乾いていはしまいかとも考える。もしそうだとすると、彼女(かのおんな)が今になって兄の弟の私に会うのは、彼女にとってかえって(つら)い悲しい事かも知れない。

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