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京に着ける夕(2)

时间: 2021-01-30    进入日语论坛
核心提示: かんかららんは長い橋の袂(たもと)を左へ切れて長い橋を一つ渡って、ほのかに見える白い河原(かわら)を越えて、藁葺(わらぶき)
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 かんかららんは長い橋の(たもと)を左へ切れて長い橋を一つ渡って、ほのかに見える白い河原(かわら)を越えて、藁葺(わらぶき)とも思われる不揃(ふそろい)な家の間を通り抜けて、梶棒(かじぼう)を横に切ったと思ったら、四抱(よかかえ)五抱(いつかかえ)もある大樹(たいじゅ)の幾本となく提灯(ちょうちん)の火にうつる鼻先で、ぴたりと留まった。寒い町を通り抜けて、よくよく寒い所へ来たのである。(はるか)なる頭の上に見上げる空は、枝のために(さえぎ)られて、手の(ひら)ほどの奥に料峭(りょうしょう)たる星の影がきらりと光を放った時、余は車を降りながら、元来どこへ寝るのだろうと考えた。
「これが加茂(かも)(もり)だ」と主人が云う。「加茂の森がわれわれの庭だ」と居士(こじ)が云う。大樹(たいじゅ)()ぐって、(ぎゃく)に戻ると玄関に()が見える。なるほど家があるなと気がついた。
 玄関に待つ野明(のあき)さんは坊主頭(ぼうずあたま)である。台所から首を出した爺さんも坊主頭である。主人は哲学者である。居士は洪川和尚(こうせんおしょう)会下(えか)である。そうして家は森の中にある。(うしろ)竹藪(たけやぶ)である。顫えながら飛び込んだ客は寒がりである。
 子規と来て、ぜんざいと京都を同じものと思ったのはもう十五六年の昔になる。夏の()の月(まる)きに乗じて、清水(きよみず)の堂を徘徊(はいかい)して、(あきら)かならぬ(よる)の色をゆかしきもののように、遠く(まなこ)微茫(びぼう)の底に放って、幾点の紅灯(こうとう)に夢のごとく(やわら)かなる空想を(ほしい)ままに()わしめたるは、制服の(ボタン)真鍮(しんちゅう)と知りつつも、黄金(こがね)()いたる時代である。真鍮は真鍮と悟ったとき、われらは制服を捨てて赤裸(まるはだか)のまま世の中へ飛び出した。子規は血を()いて新聞屋となる、余は尻を端折(はしょ)って西国(さいこく)出奔(しゅっぽん)する。御互の世は御互に物騒(ぶっそう)になった。物騒の(きょく)子規はとうとう骨になった。その骨も今は腐れつつある。子規の骨が腐れつつある今日(こんにち)に至って、よもや、漱石が教師をやめて新聞屋になろうとは思わなかったろう。漱石が教師をやめて、寒い京都へ遊びに来たと聞いたら、円山(まるやま)へ登った時を思い出しはせぬかと云うだろう。新聞屋になって、(ただす)(もり)の奥に、哲学者と、禅居士(ぜんこじ)と、若い坊主頭と、古い坊主頭と、いっしょに、ひっそり(かん)と暮しておると聞いたら、それはと驚くだろう。やっぱり気取っているんだと冷笑するかも知れぬ。子規は冷笑が好きな男であった。
 若い坊さんが「御湯に御這入(おはい)り」と云う。主人と居士は余が(ふる)えているのを見兼て「(こう)、まず這入れ」と云う。加茂(かも)の水の()(とお)るなかに全身を()けたときは歯の根が合わぬくらいであった。湯に()って顫えたものは古往今来(こおうこんらい)たくさんあるまいと思う。湯から出たら「公まず(ねぶ)れ」と云う。若い坊さんが厚い蒲団(ふとん)を十二畳の部屋に(かつ)()む。「郡内(ぐんない)か」と聞いたら「太織(ふとおり)だ」と答えた。「公のために新調したのだ」と説明がある上は安心して、わがものと心得て、差支(さしつかえ)なしと考えた故、御免(ごめん)(こうぶ)って寝る。
 寝心地はすこぶる(うれ)しかったが、上に掛ける二枚も、下へ敷く二枚も、ことごとく蒲団なので肩のあたりへ糺の森の風がひやりひやりと吹いて来る。車に寒く、湯に寒く、(はて)は蒲団にまで寒かったのは心得ぬ。京都では(そで)のある夜着(よぎ)はつくらぬものの由を主人から(うけたまわ)って、京都はよくよく人を寒がらせる所だと思う。
 真夜中頃に、枕頭(まくらもと)違棚(ちがいだな)()えてある、四角の紫檀製(したんせい)(わく)()()まれた十八世紀の置時計が、チーンと銀椀(ぎんわん)象牙(ぞうげ)(はし)で打つような音を立てて鳴った。夢のうちにこの響を聞いて、はっと眼を()ましたら、時計はとくに()りやんだが、頭のなかはまだ鳴っている。しかもその鳴りかたが、しだいに細く、しだいに遠く、しだいに(こまや)かに、耳から、耳の奥へ、耳の奥から、脳のなかへ、脳のなかから、心の底へ()(わた)って、心の底から、心のつながるところで、しかも心の()いて行く事のできぬ、(はる)かなる国へ抜け出して行くように思われた。この涼しき(りん)()が、わが肉体を(つらぬ)いて、わが心を(すか)して無限の幽境に(おもむ)くからは、身も魂も氷盤のごとく清く、雪甌(せつおう)のごとく(ひやや)かでなくてはならぬ。太織の夜具のなかなる余はいよいよ寒かった。
 (あかつき)は高い(けやき)(こずえ)に鳴く(からす)で再度の夢を破られた。この烏はかあとは鳴かぬ。きゃけえ、くうと曲折して鳴く。単純なる烏ではない。への字烏、くの字烏である。加茂(かも)明神(みょうじん)がかく鳴かしめて、うき我れをいとど寒がらしめ玉うの神意かも知れぬ。
 かくして太織の蒲団を離れたる余は、顫えつつ窓を開けば、依稀(いき)たる細雨(さいう)は、濃かに糺の森を()めて、糺の森はわが()(めぐ)りて、わが家の寂然(せきぜん)たる十二畳は、われを封じて、余は幾重(いくえ)ともなく寒いものに取り囲まれていた。
  春寒(はるさむ)の社頭に鶴を夢みけり

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