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草枕 三 (4)

时间: 2021-02-07    进入日语论坛
核心提示: まぼろしは戸棚(とだな)の前でとまる。戸棚があく。白い腕が袖(そで)をすべって暗闇(くらやみ)のなかにほのめいた。戸棚がまた
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 まぼろしは戸棚(とだな)の前でとまる。戸棚があく。白い腕が(そで)をすべって暗闇(くらやみ)のなかにほのめいた。戸棚がまたしまる。畳の波がおのずから幻影を渡し返す。入口の唐紙がひとりでに()たる。余が眠りはしだいに(こま)やかになる。人に死して、まだ牛にも馬にも生れ変らない途中はこんなであろう。
 いつまで人と馬の相中(あいなか)に寝ていたかわれは知らぬ。耳元にききっと女の笑い声がしたと思ったら眼がさめた。見れば夜の幕はとくに切り落されて、天下は(すみ)から隅まで明るい。うららかな春日(はるび)が丸窓の竹格子(たけごうし)を黒く染め抜いた様子を見ると、世の中に不思議と云うものの(ひそ)む余地はなさそうだ。神秘は十万億土(じゅうまんおくど)へ帰って、三途(さんず)(かわ)向側(むこうがわ)へ渡ったのだろう。
 浴衣(ゆかた)のまま、風呂場(ふろば)へ下りて、五分ばかり偶然と湯壺(ゆつぼ)のなかで顔を浮かしていた。洗う気にも、出る気にもならない。第一昨夕(ゆうべ)はどうしてあんな心持ちになったのだろう。昼と夜を(さかい)にこう天地が、でんぐり返るのは妙だ。
 身体(からだ)()くさえ退儀(たいぎ)だから、いい加減にして、()れたまま(あが)って、風呂場の戸を内から()けると、また驚かされた。
「御早う。昨夕(ゆうべ)はよく寝られましたか」
 戸を開けるのと、この言葉とはほとんど同時にきた。人のいるさえ予期しておらぬ出合頭(であいがしら)挨拶(あいさつ)だから、さそくの返事も出る(いとま)さえないうちに、
「さ、御召(おめ)しなさい」
(うし)ろへ廻って、ふわりと余の背中(せなか)へ柔かい着物をかけた。ようやくの事「これはありがとう……」だけ出して、向き直る、途端(とたん)に女は二三歩退(しりぞ)いた。
 昔から小説家は必ず主人公の容貌(ようぼう)を極力描写することに相場がきまってる。古今東西の言語で、佳人(かじん)品評(ひんぴょう)に使用せられたるものを列挙したならば、大蔵経(だいぞうきょう)とその量を争うかも知れぬ。この辟易(へきえき)すべき多量の形容詞中から、余と三歩の(へだた)りに立つ、(たい)(なな)めに(ねじ)って、後目(しりめ)に余が驚愕(きょうがく)狼狽(ろうばい)心地(ここち)よげに(なが)めている女を、もっとも適当に(じょ)すべき用語を拾い来ったなら、どれほどの数になるか知れない。しかし生れて三十余年の今日(こんにち)に至るまで(いま)だかつて、かかる表情を見た事がない。美術家の評によると、希臘(ギリシャ)の彫刻の理想は、端粛(たんしゅく)の二字に()するそうである。端粛とは人間の活力の動かんとして、未だ動かざる姿と思う。動けばどう変化するか、風雲(ふううん)雷霆(らいてい)か、見わけのつかぬところに余韻(よいん)縹緲(ひょうびょう)と存するから含蓄(がんちく)(おもむき)百世(ひゃくせい)(のち)に伝うるのであろう。世上幾多の尊厳と威儀とはこの湛然(たんぜん)たる可能力の裏面に伏在している。動けばあらわれる。あらわるれば一か二か三か必ず始末がつく。一も二も三も必ず特殊の能力には相違なかろうが、すでに一となり、二となり、三となった(あかつき)には、泥帯水(たでいたいすい)(ろう)遺憾(いかん)なく示して、本来円満(ほんらいえんまん)(そう)に戻る訳には行かぬ。この(ゆえ)(どう)と名のつくものは必ず卑しい。運慶(うんけい)仁王(におう)も、北斎(ほくさい)漫画(まんが)も全くこの動の一字で失敗している。動か静か。これがわれら画工(がこう)の運命を支配する大問題である。古来美人の形容も大抵この二大範疇(はんちゅう)のいずれにか打ち込む事が出来べきはずだ。
 ところがこの女の表情を見ると、余はいずれとも判断に迷った。口は一文字を結んで(しずか)である。眼は五分(ごぶ)のすきさえ見出すべく動いている。顔は下膨(しもぶくれ)瓜実形(うりざねがた)で、豊かに落ちつきを見せているに引き()えて、(ひたい)狭苦(せまくる)しくも、こせついて、いわゆる富士額(ふじびたい)俗臭(ぞくしゅう)を帯びている。のみならず(まゆ)は両方から(せま)って、中間に数滴の薄荷(はっか)を点じたるごとく、ぴくぴく焦慮(じれ)ている。鼻ばかりは軽薄に鋭どくもない、遅鈍に丸くもない。()にしたら美しかろう。かように別れ別れの道具が皆一癖(ひとくせ)あって、乱調にどやどやと余の双眼に飛び込んだのだから迷うのも無理はない。
 元来は(せい)であるべき大地(だいち)の一角に陥欠(かんけつ)が起って、全体が思わず動いたが、動くは本来の性に(そむ)くと悟って、(つと)めて往昔(むかし)の姿にもどろうとしたのを、平衡(へいこう)を失った機勢に制せられて、心ならずも動きつづけた今日(こんにち)は、やけだから無理でも動いて見せると云わぬばかりの有様が――そんな有様がもしあるとすればちょうどこの女を形容する事が出来る。
 それだから軽侮(けいぶ)(うら)に、何となく人に(すが)りたい景色が見える。人を馬鹿にした様子の底に(つつし)み深い分別(ふんべつ)がほのめいている。才に任せ、気を()えば百人の男子を物の数とも思わぬ(いきおい)の下から温和(おとな)しい(なさ)けが吾知らず()いて出る。どうしても表情に一致がない。(さと)りと(まよい)が一軒の(うち)喧嘩(けんか)をしながらも同居している(てい)だ。この女の顔に統一の感じのないのは、心に統一のない証拠で、心に統一がないのは、この女の世界に統一がなかったのだろう。不幸に()しつけられながら、その不幸に打ち勝とうとしている顔だ。不仕合(ふしあわせ)な女に違ない。
「ありがとう」と繰り返しながら、ちょっと会釈(えしゃく)した。
「ほほほほ御部屋は掃除(そうじ)がしてあります。()って御覧なさい。いずれ(のち)ほど」
と云うや(いな)や、ひらりと、腰をひねって、廊下を軽気(かろげ)()けて行った。頭は銀杏返(いちょうがえし)()っている。白い(えり)がたぼの下から見える。帯の黒繻子(くろじゅす)片側(かたかわ)だけだろう。

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