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草枕 五 (3)

时间: 2021-02-07    进入日语论坛
核心提示:「御嬢さんが、どうとか、したところで頭垢が飛んで、首が抜けそうになったっけ」「違(ちげえ)ねえ、がんがらがんだから、からっ
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「御嬢さんが、どうとか、したところで頭垢が飛んで、首が抜けそうになったっけ」
(ちげえ)ねえ、がんがらがんだから、からっきし、話に締りがねえったらねえ。――そこでその坊主が(のぼ)せちまって……」
「その坊主たあ、どの坊主だい」
観海寺(かんかいじ)納所坊主(なっしょぼうず)がさ……」
納所(なっしょ)にも住持(じゅうじ)にも、坊主はまだ一人も出て来ないんだ」
「そうか、急勝(せっかち)だから、いけねえ。苦味走(にがんばし)った、色の出来そうな坊主だったが、そいつが御前(おまえ)さん、レコに参っちまって、とうとう(ふみ)をつけたんだ。――おや待てよ。口説(くどい)たんだっけかな。いんにゃ文だ。文に(ちげ)えねえ。すると――こうっと――何だか、()きさつが少し変だぜ。うん、そうか、やっぱりそうか。するてえと(やっこ)さん、驚ろいちまってからに……」
「誰が驚ろいたんだい」
「女がさ」
「女が文を受け取って驚ろいたんだね」
「ところが驚ろくような女なら、殊勝(しお)らしいんだが、驚ろくどころじゃねえ」
「じゃ誰が驚ろいたんだい」
「口説た方がさ」
「口説ないのじゃないか」
「ええ、じれってえ。間違ってらあ。(ふみ)をもらってさ」
「それじゃやっぱり女だろう」
「なあに男がさ」
「男なら、その坊主だろう」
「ええ、その坊主がさ」
「坊主がどうして驚ろいたのかい」
「どうしてって、本堂で和尚(おしょう)さんと御経を上げてると、突然(いきなり)あの女が飛び込んで来て――ウフフフフ。どうしても狂印(きじるし)だね」
「どうかしたのかい」
「そんなに可愛(かわい)いなら、仏様の前で、いっしょに寝ようって、出し抜けに、泰安(たいあん)さんの(くび)(たま)へかじりついたんでさあ」
「へええ」
面喰(めんくら)ったなあ、泰安さ。気狂(きちげえ)に文をつけて、飛んだ恥を()かせられて、とうとう、その晩こっそり姿を隠して死んじまって……」
「死んだ?」
「死んだろうと思うのさ。生きちゃいられめえ」
「何とも云えない」
「そうさ、相手が気狂じゃ、死んだって()えねえから、ことによると生きてるかも知れねえね」
「なかなか面白い話だ」
「面白いの、面白くないのって、村中大笑いでさあ。ところが当人だけは、()が気が違ってるんだから、洒唖洒唖(しゃあしゃあ)して平気なもんで――なあに旦那のようにしっかりしていりゃ大丈夫ですがね、相手が相手だから、滅多(めった)にからかったり(なん)かすると、大変な目に逢いますよ」
「ちっと気をつけるかね。ははははは」
 生温(なまぬる)(いそ)から、塩気のある春風(はるかぜ)がふわりふわりと来て、親方の暖簾(のれん)(ねむ)たそうに(あお)る。身を(はす)にしてその下をくぐり抜ける(つばめ)の姿が、ひらりと、鏡の(うち)に落ちて行く。向うの(うち)では六十ばかりの爺さんが、軒下に蹲踞(うずく)まりながら、だまって貝をむいている。かちゃりと、小刀があたるたびに、赤い()(ざる)のなかに隠れる。(から)はきらりと光りを放って、二尺あまりの陽炎(かげろう)(むこう)へ横切る。丘のごとくに(うずた)かく、積み上げられた、貝殻は牡蠣(かき)か、馬鹿(ばか)か、馬刀貝(まてがい)か。(くず)れた、幾分は砂川(すながわ)の底に落ちて、浮世の表から、()らい国へ葬られる。葬られるあとから、すぐ新しい貝が、柳の下へたまる。爺さんは貝の行末(ゆくえ)を考うる暇さえなく、ただ(むな)しき殻を陽炎(かげろう)の上へ(ほう)り出す。()れの(ざる)には(ささ)うべき底なくして、彼れの春の日は無尽蔵に長閑(のど)かと見える。

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