日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 夏目漱石 » 正文

草枕 六(3)

时间: 2021-02-07    进入日语论坛
核心提示: 鉛筆を置いて考えた。こんな抽象的(ちゅうしょうてき)な興趣を画にしようとするのが、そもそもの間違である。人間にそう変りは
(单词翻译:双击或拖选)

 鉛筆を置いて考えた。こんな抽象的(ちゅうしょうてき)な興趣を画にしようとするのが、そもそもの間違である。人間にそう変りはないから、多くの人のうちにはきっと自分と同じ感興に触れたものがあって、この感興を何らの手段かで、永久化せんと試みたに相違ない。試みたとすればその手段は何だろう。
 たちまち音楽の二字がぴかりと眼に映った。なるほど音楽はかかる時、かかる必要に(せま)られて生まれた自然の声であろう。(がく)()くべきもの、習うべきものであると、始めて気がついたが、不幸にして、その辺の消息はまるで不案内である。
 次に詩にはなるまいかと、第三の領分に踏み込んで見る。レッシングと云う男は、時間の経過を条件として起る出来事を、詩の本領であるごとく論じて、詩画は不一にして両様なりとの根本義を立てたように記憶するが、そう詩を見ると、今余の発表しようとあせっている境界(きょうがい)もとうてい物になりそうにない。余が嬉しいと感ずる心裏(しんり)の状況には時間はあるかも知れないが、時間の流れに沿うて、逓次(ていじ)に展開すべき出来事の内容がない。一が去り、二が(きた)り、二が消えて三が生まるるがために(うれ)しいのではない。初から窈然(ようぜん)として同所(どうしょ)把住(はじゅう)する(おもむ)きで嬉しいのである。すでに同所に把住する以上は、よしこれを普通の言語に翻訳したところで、必ずしも時間的に材料を按排(あんばい)する必要はあるまい。やはり絵画と同じく空間的に景物を配置したのみで出来るだろう。ただいかなる景情(けいじょう)を詩中に持ち来って、この曠然(こうぜん)として倚托(きたく)なき有様を写すかが問題で、すでにこれを(とら)え得た以上はレッシングの説に従わんでも詩として成功する訳だ。ホーマーがどうでも、ヴァージルがどうでも構わない。もし詩が一種のムードをあらわすに適しているとすれば、このムードは時間の制限を受けて、順次に進捗(しんちょく)する出来事の助けを()らずとも、単純に空間的なる絵画上の要件を()たしさえすれば、言語をもって(えが)き得るものと思う。
 議論はどうでもよい。ラオコーンなどは大概忘れているのだから、よく調べたら、こっちが怪しくなるかも知れない。とにかく、()にしそくなったから、一つ詩にして見よう、と写生帖の上へ、鉛筆を押しつけて、前後に身をゆすぶって見た。しばらくは、筆の先の()がった所を、どうにか運動させたいばかりで、(ごう)も運動させる(わけ)に行かなかった。急に朋友(ほうゆう)の名を失念して、咽喉(のど)まで出かかっているのに、出てくれないような気がする。そこで(あきら)めると、出損(でそく)なった名は、ついに腹の底へ収まってしまう。
 葛湯(くずゆ)を練るとき、最初のうちは、さらさらして、(はし)手応(てごたえ)がないものだ。そこを辛抱(しんぼう)すると、ようやく粘着(ねばり)が出て、()()ぜる手が少し重くなる。それでも構わず、箸を休ませずに廻すと、今度は廻し切れなくなる。しまいには(なべ)の中の葛が、求めぬに、先方から、争って箸に附着してくる。詩を作るのはまさにこれだ。
 手掛(てがか)りのない鉛筆が少しずつ動くようになるのに勢を得て、かれこれ二三十分したら、

青春二三月。愁随芳草長。閑花落空庭。素琴横虚堂。蛸掛不動。篆煙繞竹梁。

と云う六句だけ出来た。読み返して見ると、みな画になりそうな句ばかりである。これなら始めから、画にすればよかったと思う。なぜ画よりも詩の方が作り(やす)かったかと思う。ここまで出たら、あとは大した苦もなく出そうだ。しかし画に出来ない(じょう)を、次には(うた)って見たい。あれか、これかと思い(わずら)った末とうとう、

独坐無隻語。方寸認微光。人間徒多事。此境孰可忘。会得一日静。正知百年忙。遐懐寄何処。緬白雲郷。

と出来た。もう一返(いっぺん)最初から読み直して見ると、ちょっと面白く読まれるが、どうも、自分が今しがた(はい)った神境を写したものとすると、索然(さくぜん)として物足りない。ついでだから、もう一首作って見ようかと、鉛筆を握ったまま、何の気もなしに、入口の方を見ると、(ふすま)を引いて、()(はな)った幅三尺の空間をちらりと、奇麗な影が通った。はてな。
 余が眼を転じて、入口を見たときは、奇麗なものが、すでに引き開けた襖の影に半分かくれかけていた。しかもその姿は余が見ぬ前から、動いていたものらしく、はっと思う間に通り越した。余は詩をすてて入口を見守る。
 一分と立たぬ間に、影は反対の方から、逆にあらわれて来た。振袖姿(ふりそですがた)のすらりとした女が、音もせず、向う二階の椽側(えんがわ)寂然(じゃくねん)として歩行(あるい)て行く。余は覚えず鉛筆を落して、鼻から吸いかけた息をぴたりと留めた。
 花曇(はなぐも)りの空が、刻一刻に天から、ずり落ちて、今や降ると待たれたる夕暮の欄干(らんかん)に、しとやかに行き、しとやかに帰る振袖の影は、余が座敷から六(けん)の中庭を隔てて、重き空気のなかに蕭寥(しょうりょう)と見えつ、隠れつする。
 女はもとより口も聞かぬ。傍目(わきめ)()らぬ。(えん)に引く(すそ)の音さえおのが耳に入らぬくらい静かに歩行(ある)いている。腰から下にぱっと色づく、裾模様(すそもよう)は何を染め抜いたものか、遠くて()からぬ。ただ無地(むじ)と模様のつながる中が、おのずから(ぼか)されて、夜と昼との境のごとき心地(ここち)である。女はもとより夜と昼との境をあるいている。

 

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: