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虞美人草 一(3)

时间: 2021-03-09    进入日语论坛
核心提示:「おおい」と後れた男は立ち留(どま)りながら、先(さ)きなる友を呼んだ。おおいと云う声が白く光る路を、春風に送られながら、の
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「おおい」と後れた男は立ち(どま)りながら、()きなる友を呼んだ。おおいと云う声が白く光る路を、春風に送られながら、のそり(かん)と行き尽して、(かや)ばかりなる突き当りの山にぶつかった時、一丁先きに動いていた四角な影ははたと留った。瘠せた男は、長い手を肩より高く()して、返れ返れと二度ほど(ゆす)って見せる。桜の(つえ)が暖かき日を受けて、またぴかりと肩の先に光ったと思う()もなく、彼は帰って来た。
「何だい」
「何だいじゃない。ここから登るんだ」
「こんな所から登るのか。少し妙だぜ。こんな丸木橋(まるきばし)を渡るのは妙だぜ」
「君見たようにむやみに歩行(ある)いていると若狭(わかさ)の国へ出てしまうよ」
「若狭へ出ても構わんが、いったい君は地理を心得ているのか」
「今大原女に()いて見た。この橋を渡って、あの細い道を(むこう)へ一里上がると出るそうだ」
「出るとはどこへ出るのだい」
叡山(えいざん)の上へさ」
「叡山の上のどこへ出るだろう」
「そりゃ知らない。登って見なければ分らないさ」
「ハハハハ君のような計画好きでもそこまでは聞かなかったと見えるね。千慮の一失か。それじゃ、(おお)せに従って渡るとするかな。君いよいよ登りだぜ。どうだ、歩行(ある)けるか」
「歩行けないたって、仕方がない」
「なるほど哲学者だけあらあ。それで、もう少し判然すると一人前(いちにんまえ)だがな」
「何でも好いから、先へ行くが好い」
「あとから()いて来るかい」
「いいから行くが好い」
「尾いて来る気なら行くさ」
 渓川(たにがわ)に危うく渡せる一本橋を前後して横切った二人の影は、草山の草繁き中を、(かろ)うじて一縷(いちる)の細き力に(いただ)きへ抜ける小径(こみち)のなかに隠れた。草は(もと)より去年の(しも)を持ち越したまま立枯(たちがれ)の姿であるが、薄く溶けた雲を(とお)して真上から射し込む日影に()し返されて、両頬(りょうきょう)のほてるばかりに暖かい。

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