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虞美人草 一(4)

时间: 2021-03-09    进入日语论坛
核心提示:「おい、君、甲野(こうの)さん」と振り返る。甲野さんは細い山道に適当した細い体躯(からだ)を真直(まっすぐ)に立てたまま、下を
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「おい、君、甲野(こうの)さん」と振り返る。甲野さんは細い山道に適当した細い体躯(からだ)真直(まっすぐ)に立てたまま、下を向いて
「うん」と答えた。
「そろそろ降参しかけたな。弱い男だ。あの下を見たまえ」と例の桜の杖を左から右へかけて一振りに振り廻す。
 振り廻した杖の先の尽くる、(はる)か向うには、白銀(しろかね)の一筋に眼を射る高野川を(ひら)めかして、左右は燃え(くず)るるまでに濃く咲いた菜の花をべっとりと(なす)り着けた背景には薄紫(うすむらさき)遠山(えんざん)縹緲(ひょうびょう)のあなたに(えが)き出してある。
「なるほど好い景色(けしき)だ」と甲野さんは例の長身を()じ向けて、(きわ)どく六十度の勾配(こうばい)に擦り落ちもせず立ち留っている。
「いつの()に、こんなに高く登ったんだろう。早いものだな」と宗近(むねちか)君が云う。宗近君は四角な男の名である。
「知らぬ間に堕落したり、知らぬ間に悟ったりするのと同じようなものだろう」
「昼が夜になったり、春が夏になったり、若いものが年寄りになったり、するのと同じ事かな。それなら、おれも()くに心得ている」
「ハハハハそれで君は幾歳(いくつ)だったかな」
「おれの幾歳より、君は幾歳だ」
「僕は分かってるさ」
「僕だって分かってるさ」
「ハハハハやっぱり隠す了見(りょうけん)だと見える」
「隠すものか、ちゃんと分ってるよ」
「だから、幾歳なんだよ」
「君から先へ云え」と宗近君はなかなか動じない。
「僕は二十七さ」と甲野君は雑作(ぞうさ)もなく言って退()ける。
「そうか、それじゃ、僕も二十八だ」
「だいぶ年を取ったものだね」
冗談(じょうだん)を言うな。たった一つしか違わんじゃないか」
「だから御互にさ。御互に年を取ったと云うんだ」
「うん御互にか、御互なら勘弁するが、おれだけじゃ……」
「聞き捨てにならんか。そう気にするだけまだ若いところもあるようだ」
「何だ坂の途中で人を馬鹿にするな」

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