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虞美人草 二(12)

时间: 2021-03-10    进入日语论坛
核心提示:「なに?」と藤尾は答えた。昼と夜の間に立つ人の、昼と夜の間の返事である。「おや気楽な人だ事。そんなに面白い御本なのかい。
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「なに?」と藤尾は答えた。昼と夜の間に立つ人の、昼と夜の間の返事である。
「おや気楽な人だ事。そんなに面白い御本なのかい。――あとで御覧なさいな。失礼じゃないか。――この通り世間見ずのわがままもので、まことに困り切ります。――その御本は小野さんから拝借したのかい。大変奇麗(きれい)――(よご)さないようになさいよ。本なぞは大事にしないと――」
「大事にしていますわ」
「それじゃ、好いけれども、またこないだのように……」
「だって、ありゃ兄さんが悪いんですもの」
「甲野君がどうかしたんですか」と小野さんは始めて口らしい口を(ひら)いた。
「いえ、あなた、どうもわがまま(もの)の寄り合いだもんでござんすから、始終(しじゅう)、小供のように喧嘩(けんか)ばかり致しまして――こないだも兄の本を……」と御母さんは藤尾の方を見て、言おうか、言うまいかと云う態度を取る。同情のある恐喝(きょうかつ)手段は長者(ちょうしゃ)の好んで年少に対して用いる遊戯である。
「甲野君の書物をどうなすったんです」と小野さんは恐る恐る聞きたがる。
「言いましょうか」と老人は半ば笑いながら、控えている。玩具(おもちゃ)の九寸五分を突き付けたような気合である。
「兄の本を庭へ()げたんですよ」と藤尾は母を差し置いて、鋭どい返事を小野さんの眉間(みけん)へ向けて()げつけた。御母さんは苦笑(にがわら)いをする。小野さんは口を()く。
「これの兄も御存じの通り随分変人ですから」と御母(おっか)さんは遠廻しに棄鉢(すてばち)になった娘の御機嫌をとる。
「甲野さんはまだ御帰りにならんそうですね」と小野さんは、うまいところで話頭を転換した。
「まるであなた鉄砲玉のようで――あれも、始終(しじゅう)身体(からだ)が悪いとか申して、ぐずぐずしておりますから、それならば、ちと旅行でもして判然(はきはき)したらよかろうと申しましてね――でも、まだ、何だかだと駄々を()ねて、動かないのを、ようやく宗近に頼んで連れ出して(もら)いました。ところがまるで鉄砲玉で。若いものと申すものは……」
「若いって兄さんは特別ですよ。哲学で超絶しているんだから特別ですよ」
「そうかね、御母さんには何だか分らないけれども――それにあなた、あの宗近と云うのが大の呑気屋(のんきや)で、あれこそ本当の鉄砲玉で、随分の困りものでしてね」
「アハハハ快活な面白い人ですな」
「宗近と云えば、御前(おまい)さっきのものはどこにあるのかい」と御母さんは、きりりとした眼を上げて部屋のうちを見廻わす。

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