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虞美人草 二(13)

时间: 2021-03-10    进入日语论坛
核心提示:「ここです」と藤尾は、軽く諸膝(もろひざ)を斜(なな)めに立てて、青畳の上に、八反(はったん)の座布団(ざぶとん)をさらりと滑(
(单词翻译:双击或拖选)

「ここです」と藤尾は、軽く諸膝(もろひざ)(なな)めに立てて、青畳の上に、八反(はったん)座布団(ざぶとん)をさらりと()べらせる。富貴(ふうき)の色は蜷局(とぐろ)を三重に巻いた鎖の中に、(うずたか)七子(ななこ)(ふた)を盛り上げている。
 右手を()べて、輝くものを戛然(かつぜん)と鳴らすよと思う()に、(たなごころ)より滑る鎖が、やおら畳に落ちんとして、一尺の長さに()()められると、余る力を横に抜いて、(はじ)につけた柘榴石(ガーネット)の飾りと共に、長いものがふらりふらりと二三度揺れる。第一の波は(くれない)(たま)に女の白き(かいな)を打つ。第二の波は観世(かんぜ)に動いて、軽く袖口(そでくち)にあたる。第三の波のまさに静まらんとするとき、女は()と立ち上がった。
 奇麗な色が、二色、三色入り乱れて、()く動く景色(けしき)を、茫然(ぼうぜん)(なが)めていた小野さんの前へぴたりと坐った藤尾は
御母(おかあ)さん」と(うしろ)(かえり)みながら、
「こうすると引き立ちますよ」と云って(もと)の席に返る。小野さんの胴衣(チョッキ)の胸には松葉形に組んだ金の鎖が、(ボタン)の穴を左右に抜けて、黒ずんだメルトン地を背景に燦爛(さんらん)耀(かが)やいている。
「どうです」と藤尾が云う。
「なるほど()く似合いますね」と御母(おっか)さんが云う。
「全体どうしたんです」と小野さんは(けむ)に巻かれながら聞く。御母さんはホホホと笑う。
「上げましょうか」と藤尾は流し目に聞いた。小野さんは黙っている。
「じゃ、まあ、()しましょう」と藤尾は再び立って小野さんの胸から金時計を(はず)してしまった。

 

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