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虞美人草 四 (1)

时间: 2021-03-29    进入日语论坛
核心提示: 甲野(こうの)さんの日記の一筋に云う。「色を見るものは形を見ず、形を見るものは質を見ず」 小野さんは色を見て世を暮らす男
(单词翻译:双击或拖选)
 甲野(こうの)さんの日記の一筋に云う。
「色を見るものは形を見ず、形を見るものは質を見ず」
 小野さんは色を見て世を暮らす男である。
 甲野さんの日記の一筋にまた云う。
生死因縁(しょうしいんねん)無了期(りょうきなし)色相世界(しきそうせかい)現狂癡(きょうちをげんず)
 小野さんは色相(しきそう)世界に住する男である。
 小野さんは暗い所に生れた。ある人は私生児だとさえ云う。筒袖(つつそで)を着て学校へ通う時から友達に(いじ)められていた。行く所で犬に()えられた。父は死んだ。外で(ひど)い目に()った小野さんは帰る家が無くなった。やむなく人の世話になる。
 水底(みなそこ)()は、暗い所に(ただよ)うて、白帆行く岸辺に日のあたる事を知らぬ。右に(うご)こうが、(ひだ)りに(なび)こうが(なぶ)るは波である。ただその時々に(さか)らわなければ済む。()れては波も気にならぬ。波は何物ぞと考える(ひま)もない。なぜ波がつらく(おの)れにあたるかは無論問題には(のぼ)らぬ。上ったところで改良は出来ぬ。ただ運命が暗い所に()えていろと云う。そこで生えている。ただ運命が朝な夕なに動けと云う。だから動いている。――小野さんは水底の藻であった。
 京都では孤堂(こどう)先生の世話になった。先生から(かすり)の着物をこしらえて貰った。年に二十円の月謝も出して貰った。書物も時々教わった。祇園(ぎおん)の桜をぐるぐる(まわ)る事を知った。知恩院(ちおんいん)勅額(ちょくがく)を見上げて高いものだと悟った。御飯も一人前(いちにんまえ)は食うようになった。水底の藻は土を離れてようやく浮かび出す。
 東京は目の(くら)む所である。元禄(げんろく)の昔に百年の寿(ことぶき)を保ったものは、明治の()に三日住んだものよりも短命である。余所(よそ)では人が(かかと)であるいている。東京では爪先(つまさき)であるく。逆立(さかだち)をする。横に行く。気の早いものは飛んで来る。小野さんは東京できりきりと回った。
 きりきりと回った(あと)で、眼を開けて見ると世界が変っている。眼を()すっても変っている。変だと考えるのは()るく変った時である。小野さんは考えずに進んで行く。友達は秀才だと云う。教授は有望だと云う。下宿では小野さん小野さんと云う。小野さんは考えずに進んで行く。進んで行ったら陛下から銀時計を(たま)わった。浮かび出した()は水面で白い花をもつ。根のない事には気がつかぬ。

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