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虞美人草 十二 (1)

时间: 2021-04-17    进入日语论坛
核心提示: 貧乏を十七字に標榜(ひょうぼう)して、馬の糞、馬の尿(いばり)を得意気に咏(えい)ずる発句(ほっく)と云うがある。芭蕉(ばしょ
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 貧乏を十七字に標榜(ひょうぼう)して、馬の糞、馬の尿(いばり)を得意気に(えい)ずる発句(ほっく)と云うがある。芭蕉(ばしょう)が古池に(かわず)を飛び込ますと、蕪村(ぶそん)(からかさ)(かつ)いで紅葉(もみじ)を見に行く。明治になっては子規(しき)と云う男が脊髄病(せきずいびょう)(わずら)って糸瓜(へちま)の水を取った。貧に誇る風流は今日(こんにち)に至っても尽きぬ。ただ小野さんはこれを(いや)しとする。
 仙人は流霞(りゅうか)(さん)し、(ちょうこう)を吸う。詩人の食物は想像である。美くしき想像に(ふけ)るためには余裕がなくてはならぬ。美くしき想像を実現するためには財産がなくてはならぬ。二十世紀の詩趣と元禄の風流とは別物である。
 文明の詩は金剛石(ダイヤモンド)より成る。(むらさき)より成る。薔薇(ばら)()と、葡萄(ぶどう)の酒と、琥珀(こはく)(さかずき)より成る。冬は斑入(ふいり)の大理石を四角に組んで、(うるし)に似たる石炭に絹足袋(きぬたび)の底を(あたた)めるところにある。夏は氷盤(ひょうばん)(いちご)を盛って、(あま)き血を、クリームの白きなかに(とか)し込むところにある。あるときは熱帯の奇蘭(きらん)を見よがしに匂わする温室にある。野路(のじ)や空、月のなかなる花野(はなの)惜気(おしげ)も無く織り込んだ(つづれ)の丸帯にある。唐錦(からにしき)小袖(こそで)振袖(ふりそで)()れ違うところにある。――文明の詩は金にある。小野さんは詩人の本分を(まっと)うするために金を得ねばならぬ。
 詩を作るより田を作れと云う。詩人にして産を成したものは古今を傾けて幾人もない。ことに文明の民は詩人の歌よりも詩人の(おこない)を愛する。彼らは日ごと夜ごとに文明の詩を実現して、花に月に富貴(ふうき)の実生活を詩化しつつある。小野さんの詩は一文にもならぬ。
 詩人ほど金にならん商買(しょうばい)はない。同時に詩人ほど金のいる商買もない。文明の詩人は是非共(ひと)の金で詩を作り、他の金で美的生活を送らねばならぬ事となる。小野さんがわが本領を解する藤尾(ふじお)(たより)たくなるのは自然の(すう)である。あすこには中以上の恒産(こうさん)があると聞く。腹違の妹を片づけるにただの箪笥(たんす)と長持で承知するような母親ではない。ことに欽吾(きんご)は多病である。実の娘に婿(むこ)を取って、かかる気がないとも限らぬ。折々に、解いて見ろと、わざとらしく結ぶ辻占(つじうら)があたればいつも(きち)である。()いては事を仕損ずる。小野さんはおとなしくして事件の発展を、(おのずか)ら開くべき優曇華(うどんげ)の未来に待ち暮していた。小野さんは進んで仕掛けるような相撲(すもう)をとらぬ、またとれぬ男である。

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