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虞美人草 十二 (11)

时间: 2021-04-17    进入日语论坛
核心提示: 女は急(せ)いて来る。勝気な女は受太刀だなと気がつけば、すぐ急いて来る。相手が落ちついていればなお急いて来る。汗を流して
(单词翻译:双击或拖选)

 女は()いて来る。勝気な女は受太刀だなと気がつけば、すぐ急いて来る。相手が落ちついていればなお急いて来る。汗を流して斬り込むならまだしも、斬り込んで置きながら悠々(ゆうゆう)として柱に()って人を見下しているのは、酒を飲みつつ胡坐(あぐら)をかいて追剥(おいはぎ)をすると同様、ちと虫がよすぎる。
「驚くうちは(たのしみ)があるんでしょう」
 女は(さか)に寄せ返した。男は動じた様子もなく依然として上から見下している。意味が通じた気色(けしき)さえ見えぬ。欽吾の日記に云う。――ある人は十銭をもって一円の十分一(じゅうぶいち)と解釈し、ある人は十銭をもって一銭の十倍と解釈すと。同じ言葉が人に依って高くも低くもなる。言葉を用いる人の見識次第である。欽吾と藤尾の間にはこれだけの差がある。段が違うものが喧嘩(けんか)をすると妙な現象が起る。
 姿勢を変えるさえ(もの)うく見えた男はただ
「そうさ」と云ったのみである。
「兄さんのように学者になると驚きたくっても、驚ろけないから楽がないでしょう」
(たのしみ)?」と聞いた。楽の意味が分ってるのかと云わぬばかりの挨拶と藤尾は思う。兄はやがて云う。
「楽はそうないさ。その代り安心だ」
「なぜ」
「楽のないものは自殺する気遣(きづかい)がない」
 藤尾には兄の云う事がまるで分らない。蒼い顔は依然として見下している。なぜと聞くのは不見識だから黙っている。
「御前のように(たのしみ)の多いものは危ないよ」
 藤尾は思わず黒髪に波を打たした。きっと見上げる上から兄は分ったかとやはり見下(みおろ)している。何事とも知らず「埃及(エジプト)御代(みよ)しろし召す人の最後ぞ、かくありてこそ」と云う句を明かに思い出す。
「小野は相変らず来るかい」
 藤尾の眼は火打石を金槌(かなづち)の先で(たた)いたような火花を射る。構わぬ兄は
「来ないかい」と云う。
 藤尾はぎりぎりと歯を()んだ。兄は談話を控えた。しかし依然として柱に()っている。
「兄さん」
「何だい」とまた見下す。
「あの金時計は、あなたには渡しません」
「おれに渡さなければ誰に渡す」

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