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虞美人草 十二 (20)

时间: 2021-04-17    进入日语论坛
核心提示:「御無沙汰(ごぶさた)をしました」とすぐ言訳を添える。「いいえ」と女は遮(さえぎ)った。ただしそれぎりである。 男は出鼻を挫
(单词翻译:双击或拖选)

御無沙汰(ごぶさた)をしました」とすぐ言訳を添える。
「いいえ」と女は(さえぎ)った。ただしそれぎりである。
 男は出鼻を(くじ)かれた気持で、どこから出直そうかと考える。座敷は例のごとく静である。
「だいぶ(あった)かになりました」
「ええ」
 座敷のなかにこの二句を点じただけで、(あと)(もと)のごとく静になる。ところへ(こい)がぽちゃりとまた(はね)る。池は東側で、小野さんの背中に当る。小野さんはちょっと振り向いて鯉がと云おうとして、女の方を見ると、相手の眼は南側の辛夷(こぶし)()いている。――(つぼ)のごとく長い(はなびら)から、濃い(むらさき)が春を追うて抜け出した後は、残骸(なきがら)(むな)しき茶の汚染(しみ)皺立(しわだ)てて、あるものはぽきりと絶えた(うてな)のみあらわである。
 鯉がと云おうとした小野さんはまた()めた。女の顔は前よりも寄りつけない。――女は御無沙汰をした男から、御無沙汰をした訳を云わせる気で、ただいいえと受けた。男は仕損(しま)ったと心得て、だいぶ(あったか)になりましたと気を換えて見たが、それでも(げん)が見えぬので、鯉がの方へ移ろうとしたのである。男は踏み(とど)まれるところまで(すべ)って行く気で、気を()んでいるのに、女は依然として故の所に坐って動かない。知らぬ小野さんはまた考えなければならぬ。
 四五日来なかったのが気に入らないなら、どうでもなる。昨夕(ゆうべ)博覧会で見つかったなら少し面倒である。それにしても弁解の道はいくらでもつく。しかし藤尾がはたして自分と小夜子を、ぞろぞろ動く黒い影の絶間なく入れ代るうちで認めたろうか。認められたらそれまでである。認められないのに、こちらから思い切って持ち出すのは、肌を脱いで(むさ)腫物(しゅもつ)を知らぬ人の鼻の(さき)(にお)わせると同じ事になる。

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