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虞美人草 十二 (23)

时间: 2021-04-17    进入日语论坛
核心提示:「ホホホホまだ分らないんですか」と今度はまた庭まで響くほどに疳高(かんだか)く笑う。女は自由自在に笑う事が出来る。男は茫然
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「ホホホホまだ分らないんですか」と今度はまた庭まで響くほどに疳高(かんだか)く笑う。女は自由自在に笑う事が出来る。男は茫然(ぼうぜん)としている。
「小野さん、昼間もイルミネーションがありますか」と云って、両手をおとなしく膝の上に重ねた。(さん)たる金剛石(ダイヤモンド)がぎらりと痛く、小野さんの眼に飛び込んで来る。小野さんは竹箆(しっぺい)でぴしゃりと頬辺(ほおぺた)(たた)かれた。同時に頭の底で見られたと云う音がする。
「あんまり、勉強なさるとかえって金時計が取れませんよ」と女は澄した顔で畳み掛ける。男の陣立は総崩(そうくずれ)となる。
「実は一週間前に京都から(もと)の先生が出て来たものですから……」
「おや、そう、ちっとも知らなかったわ。それじゃ御忙い訳ね。そうですか。そうとも知らずに、飛んだ失礼を申しまして」と(うそぶ)きながら頭を()れた。緑の髪がまた動く。
「京都におった時、大変世話になったものですから……」
「だから、いいじゃありませんか、大事にして上げたら。――私はね。昨夕(ゆうべ)兄と(はじめ)さんと糸子さんといっしょに、イルミネーションを見に行ったんですよ」
「ああ、そうですか」
「ええ、そうして、あの池の(ふち)亀屋(かめや)の出店があるでしょう。――ねえ知っていらっしゃるでしょう、小野さん」
「ええ――知って――います」
「知っていらっしゃる。――いらっしゃるでしょう。あすこで(みんな)して御茶を飲んだんです」
 男は席を立ちたくなった。女はわざと落ちついた風を、()くまでも(よそお)う。
「大変(おいし)い御茶でした事。あなた、まだ御這入(おはいり)になった事はないの」
 小野さんは黙っている。
「まだ御這入にならないなら、今度(こんだ)是非その京都の先生を御案内なさい。私もまた一さんに連れて行って貰うつもりですから」
 藤尾は一さんと云う名前を妙に響かした。
 春の影は(かたぶ)く。永き日は、永くとも二人の専有ではない。床に飾ったマジョリカの置時計が絶えざる対話をこの一句にちんと切った。三十分ほどしてから小野さんは門外へ出る。その()の夢に藤尾は、驚くうちは(たのしみ)がある! 女は仕合(しあわせ)なものだ! と云う(あざけり)(れい)を聴かなかった。

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