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虞美人草 十三 (4)

时间: 2021-04-17    进入日语论坛
核心提示:「あの時小野さんがいらしったでしょう」「ええ、いました」「美しい方(かた)を連れていらしったでしょう」「美しい? そう。若
(单词翻译:双击或拖选)

「あの時小野さんがいらしったでしょう」
「ええ、いました」
「美しい(かた)を連れていらしったでしょう」
「美しい? そう。若い人といっしょのようでしたね」
「あの方を御存じでしょう」
「いいえ、知らない」
「あら。だって兄がそう云いましたわ」
「そりゃ顔を知ってると云う意味なんでしょう。話をした事は一遍もありません」
「でも知っていらっしゃるでしょう」
「ハハハハ。どうしても知ってなければならないんですか。実は()った事は何遍もあります」
「だから、そう云ったんですわ」
「だから何と」
「面白かったって」
「なぜ」
「なぜでも」
 二重瞼(ふたえまぶた)に寄る波は、寄りては(くず)れ、崩れては寄り、黒い(ひとみ)を、見よがしに(もてあそ)ぶ。(しげ)き若葉を()る日影の、錯落(さくらく)と大地に()くを、風は枝頭(しとう)(うご)かして、ちらつく(こけ)の定かならぬようである。甲野さんは糸子の顔を見たまま、なぜの説明を求めなかった。糸子も進んでなぜの訳を話さなかった。なぜ愛嬌(あいきょう)のうちに(おぼ)れて、要領を得る前に、行方(ゆくえ)を隠してしまった。
 塗り立てて瓢箪形(ひょうたんなり)の池浅く、焙烙(ほうろく)()る玉子の黄味に、朝夕を楽しく暮す金魚の世は、尾を振り立てて()(もぐ)るとも、起つ波に身を(さらわ)るる(うれい)はない。鳴戸(なると)を抜ける(たい)の骨は潮に()まれて年々(としどし)に硬くなる。荒海の下は地獄へ底抜けの、行くも帰るも徒事(いたずらごと)では通れない。ただ広海(ひろうみ)荒魚(あらうお)も、三つ尾の(まる)()も、同じ箱に入れられれば、水族館に隣合(となりあわせ)の友となる。隔たりの関は見えぬが、仕切る硝子(ガラス)()き通りながら、突き抜けようとすれば鼻頭(はなづら)を痛めるばかりである。海を知らぬ糸子に、海の話は出来ぬ。甲野さんはしばらく瓢箪形に応対をしている。
「あの女はそんなに美人でしょうかね」
「私は美いと思いますわ」

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