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虞美人草 十四 (1)

时间: 2021-04-17    进入日语论坛
核心提示: 電車が赤い札を卸(おろ)して、ぶうと鳴って来る。入れ代って後(うしろ)から町内の風を鉄軌(レール)の上に追い捲(ま)くって去る
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 電車が赤い札を(おろ)して、ぶうと鳴って来る。入れ代って(うしろ)から町内の風を鉄軌(レール)の上に追い()くって去る。按摩(あんま)(すき)を見計って恐る恐る向側(むこうがわ)へ渡る。茶屋の小僧が(うす)()きながら笑う。旗振(はたふり)の着るヘル地の織目は、(ほこり)がいっぱい溜って、黄色にぼけている。古本屋から洋服が出て来る。鳥打帽が(よせ)の前に立っている。今晩の語り物が塗板に白くかいてある。空は針線(はりがね)だらけである。一羽の(とび)も見えぬ。上の静なるだけに下はすこぶる雑駁(ざっぱく)な世界である。
「おいおい」と大きな声で後から呼ぶ。
 二十四五の夫人がちょっと振り向いたまま行く。
「おい」
 今度は印絆天(しるしばんてん)が向いた。
 呼ばれた本人は、知らぬ()に、来る人を()けて早足に行く。抜き(くら)をして飛んで来た二(りょう)人力(じんりき)(さえ)ぎられて、間はますます遠くなる。宗近(むねちか)君は胸を出して()け出した。(ゆる)く着た(あわせ)と羽織が、足を(おろ)すたんびに(おどり)を踊る。
「おい」と(うしろ)から手を()ける。肩がぴたりと留まると共に、小野さんの細面(ほそおもて)(なな)めに見えた。両手は(ふさ)がっている。
「おい」と手を懸けたまま肩をゆす振る。小野さんはゆす振られながら向き直った。
「誰かと思ったら……失敬」
 小野さんは帽子のまま鄭寧(ていねい)会釈(えしゃく)した。両手は(ふさ)がっている。
「何を考えてるんだ。いくら呼んでも(きこ)えない」
「そうでしたか。ちっとも気がつかなかった」
「急いでるようで、しかも地面の上を歩いていないようで、少し妙だよ」
「何が」
「君の歩行方(あるきかた)がさ」
「二十世紀だから、ハハハハ」
「それが新式の歩行方か。何だか片足が新で片足が旧のようだ」
「実際こう云うものを()げていると歩行にくいから……」
 小野さんは両手を前の方へ出して、この通りと云わぬばかりに、自分から下の方へ眼を着けて見せる。宗近君も自然と腰から下へ視線を移す。

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