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虞美人草 十四 (3)

时间: 2021-04-17    进入日语论坛
核心提示:「散歩ですか」と小野さんは鄭寧(ていねい)に聞いた。「うん。今、その角(かど)で電車を下りたばかりだ。だから、どっちへ行って
(单词翻译:双击或拖选)
「散歩ですか」と小野さんは鄭寧(ていねい)に聞いた。
「うん。今、その(かど)で電車を下りたばかりだ。だから、どっちへ行ってもいい」
 この答は少々論理に(かな)わないと、小野さんは思った。しかし論理はどうでも構わない。
「僕は少し急ぐから……」
「僕も急いで差支(さしつかえ)ない。少し君の歩く方角へ急いでいっしょに行こう。――その紙屑籠(かみくずかご)を出せ。持ってやるから」
「なにいいです。見っともない」
「まあ、出しなさい。なるほど嵩張(かさば)る割に軽いもんだね。見っともないと云うのは小野さんの事だ」と宗近君は屑籠を()りながら歩き出す。
「そう云う風に()げるとさも軽そうだ」
「物は提げ様一つさ。ハハハハ。こりゃ勧工場(かんこうば)で買ったのかい。だいぶ精巧なものだね。紙屑を入れるのはもったいない」
「だから、まあ往来を持って歩けるんだ。本当の紙屑が這入(はい)っていちゃ……」
「なに持って歩けるよ。電車は人屑をいっぱい詰めて威張って往来を歩いてるじゃないか」
「ハハハハすると君は屑籠の運転手と云う事になる」
「君が屑籠の社長で、頼んだ男は株主か。滅多(めった)な屑は入れられない」
歌反古(うたほご)とか、五車(ごしゃ)反古と云うようなものを入れちゃ、どうです」
「そんなものは()らない。紙幣(しへい)の反古をたくさん入れて貰いたい
「ただの反古を入れて置いて、催眠術を掛けて貰う方が早そうだ」
「まず人間の方で先に反古(ほご)になる訳だな。乞う(かい)より始めよか。人間の反古なら催眠術を掛けなくてもたくさんいる。なぜこう隗より始めたがるのかな」
「なかなか隗より始めたがらないですよ。人間の反故が自分で屑籠の中へ這入ってくれると都合がいいんだけれども」
「自働屑籠を発明したら好かろう。そうしたら人間の反故がみんな自分で飛び込むだろう」
「一つ専売でも取るか」
「アハハハハ好かろう。知ったもののうちで飛び込ましたい人間でもあるかね」
「あるかも知れません」と小野さんは切り抜けた。
「時に君は昨夕(ゆうべ)妙な(つれ)とイルミネーションを見に行ったね」
 見物に行った事はさっき露見してしまった。今更(いまさら)隠す必要はない。

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