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虞美人草 十四 (5)

时间: 2021-04-17    进入日语论坛
核心提示:「みんな新式な装釘(バインジング)だ。どうも」「表紙だけ奇麗にして、内容の保険をつけた気なのかな」「あなた方のほうと違って
(单词翻译:双击或拖选)
「みんな新式な装釘(バインジング)だ。どうも」
「表紙だけ奇麗にして、内容の保険をつけた気なのかな」
「あなた方のほうと違って文学書だから」
「文学書だから上部(うわべ)を奇麗にする必要があるのかね。それじゃ文学者だから金縁の眼鏡を掛ける必要が起るんだね」
「どうも、きびしい。しかしある意味で云えば、文学者も多少美術品でしょう」と小野さんはようやく窓を離れた。
「美術品で結構だが、金縁眼鏡だけで保険をつけてるのは(なさけ)ない」
「とかく眼鏡が(たた)るようだ。――宗近君は近視眼じゃないんですか」
「勉強しないから、なりたくてもなれない」
「遠視眼でもないんですか」
冗談(じょうだん)を云っちゃいけない。――さあ好加減(いいかげん)に歩こう」
 二人は肩を(なら)べてまた歩き出した。
「君、()と云う鳥を知ってるだろう」と宗近君が歩きながら云う。
「ええ。鵜がどうかしたんですか」
「あの鳥は魚をせっかく呑んだと思うと吐いてしまう。つまらない」
「つまらない。しかし魚は漁夫(りょうし)魚籃(びく)の中に這入(はい)るから、いいじゃないですか」
「だからアイロニーさ。せっかく本を読むかと思うとすぐ屑籠(くずかご)のなかへ入れてしまう。学者と云うものは本を吐いて暮している。なんにも自分の滋養にゃならない。(とく)の行くのは屑籠ばかりだ」
「そう云われると学者も気の毒だ。何をしたら好いか分らなくなる」
行為(アクション)さ。本を読むばかりで何にも出来ないのは、皿に盛った牡丹餅(ぼたもち)()にかいた牡丹餅と間違えておとなしく(なが)めているのと同様だ。ことに文学者なんてものは奇麗な事を吐く割に、奇麗な事をしないものだ。どうだい小野さん、西洋の詩人なんかによくそんなのがあるようじゃないか」
「さよう」と小野さんは()を延ばして答えたが、
(たと)えば」と聞き返した。
「名前なんか忘れたが、何でも女をごまかしたり、女房をうっちゃったりしたのがいるぜ」
「そんなのはいないでしょう」
「なにいる、たしかにいる」
「そうかな。僕もよく覚えていないが……」
「専門家が覚えていなくっちゃ困る。――そりゃそうと昨夜(ゆうべ)の女ね」

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