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虞美人草 十五 (18)

时间: 2021-05-05    进入日语论坛
核心提示:「藤尾、この家(うち)と、私(わたし)が父(おとっ)さんから受け襲(つ)いだ財産はみんな御前にやるよ」「いつ」「今日からやる。―
(单词翻译:双击或拖选)
「藤尾、この(うち)と、(わたし)(おとっ)さんから受け()いだ財産はみんな御前にやるよ」
「いつ」
「今日からやる。――その代り、(おっか)さんの世話は御前がしなければいけない」
「ありがとう」と云いながら、また母の方を見る。やはり笑っている。
「御前宗近へ行く気はないか」
「ええ」
「ない? どうしても(いや)か」
「厭です」
「そうか。――そんなに小野が好いのか」
 藤尾は(きっ)となる。
「それを聞いて何になさる」と椅子(いす)の上に背を()して云う。
「何にもしない。私のためには何にもならない事だ。ただ御前のために云ってやるのだ」
「私のために?」と言葉の尻を上げて置いて、
「そう」とさも軽蔑(けいべつ)したように落す。母は始めて口を出す。
「兄さんの考では、小野さんより(はじめ)の方がよかろうと云う話なんだがね」
「兄さんは兄さん。私は私です」
「兄さんは小野さんよりも一の方が、母さんを大事にしてくれると御言いのだよ」
「兄さん」と藤尾は鋭く欽吾に向った。「あなた小野さんの性格を知っていらっしゃるか」
「知っている」と閑静(しずか)に云う。
「知ってるもんですか」と立ち上がる。「小野さんは詩人です。高尚な詩人です」
「そうか」
「趣味を解した人です。愛を解した人です。温厚の君子です。――哲学者には分らない人格です。あなたには一さんは分るでしょう。しかし小野さんの価値(ねうち)は分りません。けっして分りません。一さんを()める人に小野さんの価値が分る訳がありません。……」
「じゃ小野にするさ」
「無論します」
 云い()てて紫の(リボン)は戸口の方へ(うご)いた。(ほそ)い手に円鈕(ノッブ)をぐるりと回すや(いな)や藤尾の姿は深い背景のうちに隠れた。

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