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虞美人草 十六 (3)

时间: 2021-05-05    进入日语论坛
核心提示: 茶がかった平床(ひらどこ)には、釣竿を担(かつ)いだ蜆子和尚(けんすおしょう)を一筆(ひとふで)に描(か)いた軸(じく)を閑静に掛
(单词翻译:双击或拖选)
 茶がかった平床(ひらどこ)には、釣竿を(かつ)いだ蜆子和尚(けんすおしょう)一筆(ひとふで)()いた(じく)を閑静に掛けて、前に青銅の古瓶(こへい)()える。鶴ほどに長い頸の中から、すいと出る二茎(ふたくき)に、十字と四方に囲う葉を境に、数珠(じゅず)()く露の(たま)二穂(ふたほ)ずつ(ぐう)を作って咲いている。
「大変細い花ですね。――見た事がない。何と云うんですか」
「これが例の二人静(ふたりしずか)だ」
「例の二人静? 例にも何にも今まで聞いた事がないですね」
「覚えて置くがいい。面白い花だ。白い穂がきっと二本ずつ出る。だから二人静。謡曲に静の霊が二人して舞うと云う事がある。知っているかね」
「知りませんね」
「二人静。ハハハハ面白い花だ」
「何だか因果(いんが)のある花ばかりですね」
「調べさえすれば因果はいくらでもある。御前、梅に幾通(いくとおり)あるか知ってるか」と煙草盆を釣るして、また煙管(きせる)の雁首で灰の中を()き廻す。宗近君はこの機に乗じて話頭を転換した。
阿爺(おとっ)さん。今日ね、久しぶりに髪結床(かみゆいどこ)へ行って、頭を刈って来ました」と右の手で黒いところを()で廻す。
「頭を」と云いながら羅宇(らお)の中ほどを祥瑞(しょんずい)(ふち)でとんと(たた)いて灰を落す。
「あんまり奇麗(きれい)にもならんじゃないか」と真向(まむき)に帰ってから云う。
「奇麗にもならんじゃないかって、阿爺(おとっ)さん、こりゃ五分刈(ごぶがり)じゃないですぜ」
「じゃ何刈だい」
「分けるんです」
「分かっていないじゃないか」
「今に分かるようになるんです。真中が少し長いでしょう」
「そう云えば心持長いかな。()せばいいのに、見っともない」
「見っともないですか」
「それにこれから夏向は熱苦しくって……」
「ところがいくら熱苦しくっても、こうして置かないと不都合なんです」
「なぜ」

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