昔(むかし),三太(さんた)という,ばかな息子がおりました。
ある日,親父(おやじ)の留守(るす)に,人が訪ねてまいりました。
三太は,玄関(げんかん)に出ると,
「親父は,ただ今,留守でございます。お前様は知らぬ人だから,家にあげるわけにはいきませぬ。」
「そうかそうか。三太さんとは,知り合いではないがね,親父様とは,知り合いだから,しばらく待たしてもらいましょう。」
と言いますと,息子の三太,しばらく考えていましたが,すっと奥(おく)に引っ込む(ひっこむ)と,親父の眼鏡(ねがめ)をかけて出てきました。 それでよくよく,客を見てから,
「この,ととの目で見ても,お前は,やっぱり知れぬ人だ。」
从前,有个名叫三太的傻儿子。
有一天,爸爸没在家时,有客人来访。
三太来到门口说:“我爸爸不在家,你是我不认识的人,所以我不能让你进屋。”
“是啊,是啊。我跟你三太是不认识,但我跟你爸爸是认识的,所以让我等他一会儿吧。”
三太听了,想了想,嗖地一下子就缩回屋里,戴上他爸爸的眼镜出来仔细看了半天,然后说道:
“用爸爸的眼看,你也还是不认识的人。”
(注释:“とと”是幼儿语,意思是“父亲”、“爸爸”。)