「ほら、鉛筆じゃ」
「あ、どうも。なんですかこれ」
「おまえも、早速そのノートに推薦コメントを書くのじゃ」
「はいわかりました。えーと、このドクターは噂通りの名医で……、って書けるわけねーだろっっ!!! オレまだ3分前にここに来たばっかり!!!」
この診療所に着いてほんの数分、ひとつも診察が済んでいないというか始まってもいないのに、いきなり推薦コメントを書くように要求して来るじいさんドクター。無茶言うなよあんた。オレはまだここに来て健康茶を出してもらっただけだぞ。
「あのドクター。推薦コメントというものは、ドクターの診察を受けて満足して初めて書けるものではないでしょうか? 僕はお茶飲んで推薦文書くためだけに1時間も自転車漕いで来たわけじゃないんですから」
「あっそう。書かないの?」
「だから後で書くんですっ!! 逆に今何を書けというんですかっ!!!」
「細かいのう。みんな書いてくれるのに。それじゃこっちにおいで」
「イエッサー!」
ということで他の客は誰もいないため、待ち時間無しでオレはスーパードクターの診察を受けられることになった。
通されたのは、診察室とか医務室というところではなく、漢方薬の保管庫といった印象の漢方部屋である。床や壁の棚に、所狭しと漢方薬の粉が満タンに入ったバケツが並んでいる。それぞれの漢方薬に漢字で名前の書かれた紙の札が刺さっているが、バケツには蓋が無く衛生面が非常に気になる。
まあでも、神医だし……。きっとこれらの漢方を出す時には、「汚れた漢方薬を飲んでも体が悪くならない漢方薬」も一緒に処方してくれるんだろう。
「それでは診てしんぜよう。手を出しなさい」
「こんな部屋の片隅で立ち話もなんですが、まあいいです。手を出します」
ドクターは先ずオレの腕を取って脈を計り、続いて「あかんべー」とまぶたの下を引っ張って眼をチェック、更に舌もペロリンチョ!と出させて鋭くオレの健康状態を観察した。