「なに、目? 頭?」
「はい。バカにつける薬は無いといいますが、そこはやはり中国のスーパードクターですから、飲むだけで頭脳明晰になっちゃうような漢方薬も作れるんじゃないかなと……」
「今渡した薬があるだろう。それを毎日欠かさず飲むんだ」
「でもこれって下痢と腰痛の薬なのでは?」
「この漢方薬はな、ホールボディに効くんだ。つまり目も頭も含んでいる。全部に効くんだ」
「えっ! じゃあこれだけを服用していれば、下痢も腰痛も無くなり次第に目も良く見えるようになり面白いストーリーもどんどんどんどん思い浮かぶように……」
「ああ、なるなる。全部なる」
そうか、この漢方薬は腹痛にも腰痛にも目にも頭にも効果があるものだったのか。これだけ飲んでいれば痛みともおさらば視力も回復、頭の回転も早くなり苦手だった英語がビリから学年トップに! なるわけねーだろっっ!!!
……ドクター、面倒くさくなってますね??
残念ながら、今のでドクターと漢方薬へのオレの中での信憑性はリーマンショック時の株式市場くらいの大幅下落を見せた。麗江だけに、この下落はリージャンショックと呼ぼうではないか。
もったいないなあ。もし本当に頭の良くなる漢方薬があったら、億万長者間違いなしなのに。宣伝のために羞恥心にでも飲ませてみて、数ヶ月後に上地雄輔が司法試験に合格しようものなら全世界から注文が殺到するのに。
しょうがない。そろそろ帰るか。
「ドクター、ありがとうございました。ではいかほど払えばよろしいでしょうか」
「それは、おまえに任せる。いくらでも払えばよろしい」
「それでは数十元を奉納させていただきます。このくらいが相場だと他の旅行者から聞いたもので」
「もちろんその通り医は仁術、払えるだけでいいのさ。もしおまえが貧乏ならば少なくても全然構わない」
「はいそれなりに貧乏なので数十元を……」
「もしおまえが貧乏だったら気持ちだけで構わないよ。でももしリッチパーソンならば、いくらでも出していいんだよ。ほら、この手紙を見なさい。これはイギリス人から来た手紙だ。私は彼のところに漢方薬を送ってやったら、手紙と一緒に100ドル札を入れて返して来たんだ」
「そうですか。それは凄いですイギリス人。それでは僕は数十元を……」
「な、このようにリッチな者は私の研究のためにたくさんのお金を出してくれている。もちろん貧乏な人間にわしは要求しない。でももしおまえがリッチなら、100元、200元、300元、そのくらいは出せるじゃないかと……」
「気持ちはそのくらい出したいんですが、まだ貧乏旅行も先は長いため今回は数十元を……」