「まったくあきれかえったもんだこいつは……。支配人! 支配人ちょっと!!」
「アイアイサ~どうした小姐~」
「このガキが帰らないのよっ!! もういいでしょ、だいたいこういう製品は5元くらいよね! 他のクッキーもそのくらいでしょ!? もう5元で売っちゃいましょうよ!」
「しょうがないな。じゃあ5元で計算してやりなさい」
「そうするわ。そうしないと何時間でも居座るつもりだわこいつ」
…………。遂に勝負はついた。
結局根負けしたおばさんの「5元でしょ、5元にしとこうよもう!」という適当な提案によって価格は5元と決まり、ようやく!! オレは夢のクリスプチョコレートをゲットできたのである!!!
ある意味、このレジ係とのやり取りは、平成の日中戦争と表現してもよかったかもしれない。日本代表のオレが中国の不条理に対して戦いを挑み、見事に不正を打ち破ったのである! このように、納得いかないこと、追及すべきところに出くわしたら、人は誰でも自分の名誉をかけて強気で追及せねばならぬのだ。弱腰外交を繰り返す日本の外務省ならびに総理閣僚にもこの姿勢を大いに見習ってもらいたい。なんなら、オレ自身が入閣して日本外交の改革にひと役買ってもいいと思っている。
オレはスーパーのビニール袋をふりふり勝ち誇って宿に帰り、部屋に入ると早速箱を開けてお茶とともにクリスピークッキーを味わおうと準備に取り掛かった。箱の中は丁寧に個別包装になっていたので、パッケージのギザギザのところをピリリっと裂いて中身を取り出す。
あっ?
クリスピーが無い……。
次の袋を開けても、次の袋を開けても、一粒のクリスピーすら見当たらない。
…………。
騙された。
パッケージ写真に騙された(号泣)。
どうしてだっっ!!! 商品名だって「クリスピーチョコレート」になってるじゃないかよっっ!!! なんでクリスピーチョコレートにクリスピーが乗ってないんだっ!!!! じゃあ名前の「クリスプ」の部分はいったい何を表してるんだよっっっ(涙)!!!! あんなに苦労して買ったのにっっ(号泣)!!!!
こうしてガッカリしながら食べたただのチョコレートクッキーは、全然美味くなかった。