新疆は古くから多民族の居住地であり、歴史上多くの集落や民族が暮らしてきた。新疆の民族の歴史は3世紀初(漢代・紀元前206年-西暦220年)に遡る。当時は主として塞、月氏、烏孫、羌、匈奴と漢などの民族があった。
3世紀から6世紀(魏晋南北朝・西暦220年-589年)は中国の民族大融合の時代であった。各民族の移住や往来が頻繁で、柔然、高車、吐谷渾など多くの古代民族が新疆に入ってきた。6世紀から10世紀(隋唐・西暦581年-907年)、突厥、吐蕃などの古代民族が新疆の歴史に重要な影響を与えた。9世紀に新疆に入った大勢の回鶻人が民族融合を通じて、その後12世紀に新疆入りした一部の契丹人と蒙古人を同化させた。18世紀半ば以降には、清朝政府の派遣により東北からの満族、シベ族、索倫族(ダフール族)等の兵士が新疆に駐屯し、新疆の少数民族に仲間入りした。以降、ロシア族、タタール族なども移住してきた。19世紀末には、ウイグル族、漢族、カザフ族、蒙古族、回族、キルギス族、満族、シベ族、タジク族、ダフール族、ウズベク族、タタール族、ロシア族と計13民族になり、ウイグル族を中心とした多民族居住地が形成された。
現在、この13の原住民族のほか、42の民族が暮らしている。2012年末に、新疆の総人口は2230万人になり、その内、少数民族の人口は約60%である。
2、ウイグル族
ウイグル族は中国北方の古い民族で、「ウイグル」はその自称であり、「団結」或いは「連合」という意味がある。ウイグル族の人口は941万人(2006年現在)で、新疆の主な民族である。ウイグル族は新疆の至るところに分布しているが、その大部分は天山以南のカシュガル、ホータン、及びアクスなどに居住している。ウイグル族には自らの言語と文字がある。
ウイグル族は老若男女を問わず皆、四角い帽子を被り、男性は向かい襟の長衣の下に花模様の刺繍が入った短いシャツ、女性はワンピースの上に向かい襟の黒いチョッキを着ている。また、女性はイヤリング、ブレスレット、指輪、ネックレスなどをつけ、未婚の若い女性はお下げ髪をしている。しかし、都市部で暮らす者は民族衣装ではなく一般的な洋服を着ている。
ウイグル族は礼儀正しい民族で、目上の人や友人に会った時は右手を胸に当て、体を前に傾けて挨拶する。また、ウイグル族は客好きな民族としても知られている。
歌と踊りも得意である。踊りは、軽やかで美しく変化に富んでおり、ウイグル族の楽観的で朗らかな性格を表しているといわれている。
ウイグル族は主に農業を営み、牧畜業も手がけている。ビジネスにも長けており、昔から手工業が非常に発達していた。絨毯、刺繍、シルク、銅製の壺、ナイフ、民族楽器などを作るのが得意で、これらの製品はいずれも独特で、民族的な風格を備えている。
3、カザフ族
新疆には、今143万人(2006年現在)のカザフ族が住んでいる。新疆のカザフ族は主に北部にあるイリーカザフ自治州に集中しており、自らの言語と文字を持っている。
定住生活を送っている人以外のほとんどは季節によって牧場を移し、水草を求めていく遊牧生活を送っている。
カザフ族は来客を好み、客人には最高の食事を出す習慣があるので、客が来ると必ず羊を潰してご馳走する。食事の際、主人はまず羊の頭を煮込んだ料理を客に勧める。客は羊の頭を掴みその右頬の肉を切って食べてから羊の耳を切って、主人の子供たちに分けた後、また羊の頭を主人に返すのが礼儀となっている。
カザフ族は男女を問わず馬術に精通している。若い男性は相撲と狩猟が好きで、祝日には各種の馬術コンクールを催し、技を競い合う。また、若い男女がお互い馬に乗り、女性が男性を追いかけるゲームは人気があり、若者たちの恋人探しのいいチャンスになっている。
4、キルギス族
キルギス族の人口はおよそ17万人(2006年現在)で、新疆西部のパミール高原に住んでいる。自らの言葉と文字を持っており、多くが牧畜業に従事する生活を送っている。夏には平原の川辺に住まいを建て、冬には陽が当たる山谷に移動する。キルギス族の家は通常、四角い土造りで天窓が有り、周りには野菜や果物などが植えられている。食生活は非常に豊かで、牛と羊の乳を煮詰めた油(酥油)やチーズなどがある。
キルギス族の伝統的な衣装といえば、男性は毛氈の帽子、女性は銀のボタンがついた向かい襟の上着だ。未婚の女性は10数本ものお下げをしているが、結婚した後は2本のお下げ髪にする。