シュロの糸が張られた弓でシュロ縄の弦を弾くため、少しかすれた音が特徴。音色は柔らかく、品があり、独特で人の声とよく調和し、民族色豊かな風格が漂う。牛腿琴の演奏方法はバイオリンとほぼ同じで、演奏者は本体を左肩にあて、左手でネックを持ち、弦を押し、右手で弓を弾く。音域はバイオリンより狭い。
牛腿琴はひとつひとつ手作りのため、材料や製作の段階で大きさが微妙に違う。楽器の表現力や性能をあげるため、トン族の人々は長年にわたり絶えず牛腿琴を改良してきた。改良された牛腿琴は、本体が大きくなっただけでなく、表の板と裏の板の間に木でできた支えを入れ、指板を増やしたほか、生糸や鋼線で出来た弦と、馬の尻尾の毛から作られた弓が、シュロ縄の弦と弓に変わって使われるようになってきた。そのほか、本体の底に曲がった金属片をつけらものもある。演奏する際、金属片を脇の下で挟むことで、より本体をしっかり固定できるようになった。これは楽器を支える演奏者の左手の負担を軽減し、演奏手法も豊富になっている。
トン族文化で、牛腿琴は重要な位置を占めており、歌などの伴奏で頻繁に使われる。ほぼ全てのトン族男性の家には牛腿琴があり、祝日や農閑期に、男性は牛腿琴を弾きながら親戚や友人の家を訪ねる。この時、人々は牛腿琴の音に導かれ集まる。楽器を弾き、歌を歌う光景はとても賑やかである。