ぐっすり寝たいのに、なぜか夜中に目が覚めてしまい、なかなか寝付くことができない・・・。そんな状態を「中途覚醒(ちゅうとかくせい)」と呼びます。
角谷教授らは、成人男性294人の遺伝に関わる情報を提供してもらい、睡眠時間との関係を調べました。すると、「Fabp7(※2)」と呼ばれる遺伝子に変異(本来とは違う状態になっている)があると、まとめて寝ていられる時間が短くなり、たびたび睡眠が途切れる(断片化する)傾向があることがわかりました。
すなわち、「中途覚醒」を起こしやすい状態です。
さらに興味深いことに、この遺伝子に変異があると、ヒトだけではなくマウスやショウジョウバエでも中途覚醒が起きることがわかりました。
研究グループによると、このように種を超えて「睡眠の断片化」にかかわる遺伝子がわかったのは世界で初めてのことなのだそうです。
でも気になるのは、なんでそんなことが起きるのか?ということですよね。
詳しく調べると、今回の遺伝子の変異を持つ人では、脳内でDHA(ドコサヘキサエン酸)という物質を取り込んだり、輸送したりする働きに支障が起きる可能性がある、ということがわかりました。
DHA、なんとなく聞いたことがありますよね。サンマやサバなど青魚に多く含まれ、健康に良い効果があるとたびたび話題になる成分です。研究グループは今回の結果から、DHAと睡眠に関係があるかもしれない、ということを指摘しています。
ということは、DHAを多くとると良く眠れるようになるということでしょうか。
なんとなく、「本当かな・・・?」と眉唾に感じてしまいますよね。
DHAと睡眠の意外な関係とは?
ところが調べてみると、DHAを多くとることで、睡眠の状態が良くなる可能性を示した研究が最近発表されていることがわかりました。
英オックスフォード大学が2014年に発表した研究です。
7~9歳の子ども395人にアンケートによって睡眠時間を聞き、さらに、血中のDHAの濃度を調べました。
さらに子どもを、毎日DHAのサプリメント(600mg)をとるグループと、DHAを含まない偽のサプリメント(偽薬)をとるグループに分けて、およそ4か月後、睡眠時間に変化が起きるか比較しました。
すると、血中のDHAの濃度が低い人では、睡眠の状態が悪くなる傾向があることがわかりました。
また、DHAのサプリメントを毎日とった場合と摂らなかった場合を比較したところ、全体としては差がなかったのですが、睡眠時間を厳密に測定できる「活動量計」を着けて実験を行ったグループ(43人)を調べると、DHAをとった人は1時間ほど睡眠時間が長くなり、中途覚醒が減ることがわかりました。
この論文では、さらなる検討が必要としながらも、「DHAの血中濃度を高く保とうとすることは、子どもの睡眠を改善するかもしれない」と指摘しています。
【新出単語】
まゆつばもの【眉唾】
不可轻信的,殊属可疑的事物。
その話は眉唾だ/那话令人怀疑。
トリプトファン 色氨酸。