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十二国記377

时间: 2020-08-30    进入日语论坛
核心提示: 車は躊躇《ちゅうちょ》なく駆《か》けぬけ、すぐに速度を落として悠々と去っていく。後に続く随従はなにひとつ目にはしなかっ
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 車は躊躇《ちゅうちょ》なく駆《か》けぬけ、すぐに速度を落として悠々と去っていく。後に続く随従はなにひとつ目にはしなかったふうで通り過ぎていく。
 広途にたたずんだまま惨劇《さんげき》を目《ま》の当たりにした人々は凍《こお》りついて動けなかった。馬に踏みにじられた子供は人垣《ひとがき》が作った空白の中に取り残されている。
 助け起こしに行ってやりたい、と誰もが思ったが、随従たちが振り返るのが怖《こわ》かった。その随従が掲《あ》げた幢《はた》。——郷長の車である。郷長の名は昇紘《しょうこう》。昇紘の前で目立つということは、恐ろしい危険を意味した。この街に住む者は、誰もがそれを知っている。
 くう、と子供が呻《うめ》き声をあげた。
 ——まだ、助かるかもしれない。けれどもせめて、昇紘の車が角を曲がるまでは。
 子供は小さく頭を上げる。すぐにそれを血糊《ちのり》の中に落とした。
 清秀はぴちゃん、というぬかるみの音を聞く。もう一度顔を上げて助けを求めようとしたが、もう首が上がらなかった。
 途《みち》にたたずんで自分を注視する人々を、清秀は虚《うつ》ろに見た。
 誰か助けてくれないのだろうか。起きあがりたいが、それができないでいるのに。
 ——痛いよ、鈴……。
 間近の小途から人影がひとつ走り出てきた。その人影が驚いたように足をとめ、清秀に駆《か》け寄ってくる。
「——大丈夫か」
 間近に膝《ひざ》をついた人影。どんな人物だかは分からない。もう、目がかすんでよく見ることができなかった。ただ、間近の膝を覆《おお》った布が赤い染《し》みをつけるのを見た。
「誰か——この子を運ぶものを」
 声は言って、清秀の肩に温かな手が触れた。
「しっかりしろ。いま——」
「……おれ、死ぬの、やだな……」
「だいじょうぶだ」
「……鈴が……泣くから……」
 ——あいつ、泣くと、なかなか泣きやまないから。
 すごく鬱陶《うっとう》しくて……かわいそうなんだよな……。
 それきり、彼の思考は途絶えた。
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