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十二国記464

时间: 2020-08-31    进入日语论坛
核心提示: 慶国《けいこく》首都、堯天《ぎょうてん》。本格的に陽射しが温《ゆる》んだ王宮に、ようやく遊学中の王が帰還した。 帰還し
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 慶国《けいこく》首都、堯天《ぎょうてん》。本格的に陽射しが温《ゆる》んだ王宮に、ようやく遊学中の王が帰還した。
 帰還して五日、王は王宮の奥にこもって出てこない。もと冢宰靖共《ちょうさいせいきょう》、和州州侯呀峰《わしゅうしゅうこうがほう》、そしてその和州の止水郷郷長昇紘《しすいごうごうちょう》が捕らえられた。逮捕を命じたのは王で、これに官吏《かんり》は驚愕《きょうがく》し、ある者はひどく反発したが、とりあえず内殿にさえ出てこない王に異論を言う術《すべ》がない。王のいないまま、朝議は紛糾《ふんきゅう》した。その裏で、自分の罪までが明らかになり、靖共らと同じ運命をたどるのではないかと、戦々恐々とし暗躍をもくろんだ者もないではなかったが、とりあえずそれらのことは水面下のことである。
 これから朝廷は荒れるだろう、とは官吏がひそかに囁《ささや》くところだった。靖共を失って、朝廷の権は反靖共側に移った。——少なくとも移ったように思われる。
 さまざまな思惑《おもわく》が入り乱れて五日、ようやく王が諸官を召集、主《おも》だった宮を外殿に集めたのだった。
 
 外殿にそろった諸官は、まずそこに罷免《ひめん》された元|麦州侯浩瀚《ばくしゅうこうこうかん》ら、見慣れない顔を見つけて驚愕した。ざわざわと落ちつかない主殿の玉座《ぎょくざ》に宰輔《さいほ》を従えた王の姿が現れて、一層諸官の困惑は深くなる。王は諸官と同じく、官服を着用していたからだった。まだ女のにおいの乏《とぼ》しいまま神籍《しんせき》に入った王は、位袍《いぼう》に身を包むと、女王だ、という侮《あなど》りを妙によせつけないものがある。
 それぞれの困惑はともかく、とりあえず諸官はその場に叩頭《こうとう》する。儀礼どおりに顔を上げよとの声があって、諸官は膝《ひざ》をついたままその場に身体を起こした。
「まずは、長らく留守《るす》にしてすまなかった、と言う」
 冢宰の先触れもなにもなく、いきなり王が話し始めて、諸官の困惑はさらに深くなった。古来の儀礼に従えば、王は臣下に話しかけない。臣下も王には話しかけない。書状にしたためこれを陛下の侍従に渡し、王はこれを読んで、返答を侍従に耳打ちする。それを侍従が臣下に語るという、そういうもので、さすがにいまではそんな風習を守っている国などないが、それでもやはり王はあまり直接臣下に語ったりはしないものなのだった。
「無為に時間を過ごしているつもりはなかったが、諸官に負担をかけたことを詫《わ》びる」
 言って王は言葉を切る。
「先日、捕らえられた官については、多くを言わない。彼らの罪を明らかにし、その罰を度《はか》るのは秋官《しゅうかん》の役目だから。ただし、三者を捕らえよと命じたのは、わたしであることを、秋官には忘れないでもらいたい」
 ぎょっと息を呑《の》んだ官は二人や三人ではない。——これはどう考えても、秋官に対する、手を抜いたら許さないという脅《おど》しだった。
「先日、宰輔に州師を動かすよう要請をしたが、これが果たせなかった。州師三軍の将軍はどうやら持病があるらしい。ならば将軍職は辛《つら》いだろう。そこで三将軍には辞職を勧《すす》めた」
 さらに幾人かがぎょっとする。
「失われた官の穴を埋めるために、四人の人物を招いた。まず、州師将軍の穴を埋めるために、禁軍三将軍を州師に移動する」
 ばかな、と声をあげた者があったが、これはまったく黙殺された。
「代わって、禁軍左軍将軍に、もと麦州師左軍将軍の青辛《せいしん》を据《す》える。——|桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]《かんたい》」
 は、と官服の将軍は深く頭を下げた。
「右中の二軍将軍は桓※[#「鬼+隹」、unicode9B4B]の選挙《すいせん》を許す。禁軍の綱紀《こうき》を改めよ」
「かしこまりまして」
「——浩瀚《こうかん》」
 はい、と声をあげた男は若い。いかにも怜悧《れいり》な三十前後の男だった。これが、麦州侯浩瀚か、としみじみと見やるものがほとんどだった。
「冢宰《ちょうさい》に任じる。朝廷の綱紀を改めよ」
 そんな、という異論の声が数多くあがる。これもまったく黙殺される。
「同じく麦州|州宰柴望《しゅうさいさいぼう》を和州侯《わしゅうこう》に任じる。——さらに、松伯《しょうはく》を朝廷に迎え、太師《たいし》に任じる。これらに伴い、大きく官吏《かんり》の移動を行う」
 言って、王は一座を見渡す。
「良心に忸《はじ》ることがない者は、狼狽《ろうばい》するに及ばない。予王《よおう》の官吏だからといって冷遇する気も松塾《しょうじゅく》の出身だからといって優遇する気もないから」
 そして、と玉座《ぎょくざ》の王は言う。
「みんな、立ちなさい」
 ざわ、と諸官は困惑して顔を見合わせる。おそるおそるというように、立ち上がり、身の置き場に困ったように、周囲を見渡した。
 玉座の王はそれを見渡してうなずく。側に控えた宰輔を振り返った。
「これは景麒《けいき》にも聞いてもらう。——わたしは人に礼拝されることが好きではない」
「——主上《しゅじょう》……!」
 宰輔の咎《とが》める声に、王はわずかに苦笑する。
「礼と言えば聞こえは良いが、人の間に序列あることが好きではない。人に対峙《たいじ》したとき、相手の顔が見えないことが嫌《いや》だ。国の礼節、見た目は分かるが、人から叩頭されることも、叩頭《こうとう》する人を見るのも不快だ」
「主上、お待ちください」
 とどめた宰輔を無視して、王は諸官に下す。
「これ以後、礼典、祭典、および諸々の定めある儀式、他国からの賓客《ひんきゃく》に対する場合をのぞき、伏礼を廃し、跪礼《きれい》、立礼のみとする」
「主上——!」
 宰輔の制止に、王の返答はそっけない。
「もう決めた」
「侮《あなど》られたと、怒る者がおりましょう」
「それがどうした」
「——主上!」
「他者に頭を下げさせて、それで己《おのれ》の地位を確認しなければ安心できない者のことなど、わたしは知らない」
 宰輔は絶句したし、請官も呆《あき》れて口を開けた。
「そんな者の矜持《きょうじ》など知ったことではない。——それよりも、人に頭を下げるたび、壊れていくもののほうが問題だと、わたしは思う」
「ですが」
「人はね、景麒」
 王は宰輔に言う。
「真実、相手に感謝し、心から尊敬の念を感じたときには、しぜんに頭が下がるものだ。礼とは心の中にあるものを表すためのもので、形によって心を量るためのものではないだろう。礼の名のもとに他者に礼拝を押しつけることは、他者の頭の上に足をのせて、地になすりつける行為のように感じる」
「しかし、それでは示しが」
「無礼を奨励《しょうれい》しようというわけではない。他者に対しては礼をもって接する。そんなものは当たり前のことだし、するもしないも本人の品性の問題で、それ以上のことではないだろうと言っているんだ」
「それは、そうですが……」
「わたしは、慶の民の誰もに、王になってもらいたい」
 言い放つ声は明確だった。
「地位でもって礼を強要し、他者を踏みにじることに慣れた者の末路は昇紘の例を見るまでもなく明らかだろう。そしてまた、踏みにじられることを受け入れた人々がたどる道も明らかなように思われる。人は誰の奴隷《どれい》でもない。そんなことのために生まれるのじゃない。他者に虐《しいた》げられても屈することない心、災厄《さいやく》に襲われても挫《くじ》けることのない心、不正があれば正すことを恐れず、豺虎《けだもの》に媚《こ》びず、——わたしは慶の民にそんな不羈《ふき》の民になってほしい。己《おのれ》という領土を治める唯一無二の君主に。そのためにまず、他者の前で毅然《きぜん》と首《こうべ》を上げることから始めてほしい」
 言って王は諸官を見渡す。
「諸官はわたしに、慶をどこへ導くのだ、と訊《き》いた。これで答えになるだろうか」
 諸官の返答はない。視線だけが王に向かう。
「その証《あかし》として、伏礼を廃す。——これをもって初勅《しょちょく》とする」
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