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松のや露八33

时间: 2018-11-30    进入日语论坛
核心提示:闘 鶏一「不行跡にも、ほどがある。それでも、おのれは武士か、人間か」 草履《ぞうり》の緒の切れるまで、土足が、庄次郎の尻
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 闘 鶏
 
 
「不行跡にも、ほどがある。それでも、おのれは武士か、人間か」
 草履《ぞうり》の緒の切れるまで、土足が、庄次郎の尻を蹴《け》った。
 ほどを見て、榊原健吉が、
「もう、やめい。折檻《せつかん》は、それくらいにして」
「いや、こんなことでは、腹が癒《い》えぬ」
 骨ばかりになった扇子が、顫《ふる》える手に掴まれていた。青筋の走った顔を、そっと見上げると、それは何と、叔父の小林鉄之丞ではないか。
「面目《めんぼく》次第もありません」
 庄次郎は、額を摺《す》りつけているよりほか策《て》がなかった。
「面目ない? ……こらっ庄次郎、面目などと人なみな量見が、貴様にもあるのか。あるなら、父親の苦慮、新妻の嘆き、わしの立場——ひいては藩侯のお名をも汚《けが》しおる昨年来のふしだらを、少しは、弁《わきま》えおろう」
「は、はい。重々《じゆうじゆう》」
「腹を切れ」
「…………」
「貴様が切らなければ、わしが切るぞ。嫁の里方たる石川主殿《とのも》へ、何と、顔向けができると思う」
「…………」
「これを見ろっ」
 叩きつけるように、鉄之丞は、彼の前へ何か投げやった。
(旦那様へ——)
 お照の遺言《ゆいごん》だった。
 庄次郎は、ぐわんと良心を打撃された。とうとう、自殺《や つ》たかという気がした。つねづね、死にたいような泣き顔をしていた妻だ。
 さすがに、声も顫《ふる》えて、
「ど、どういたしましたか、お照は? ……」
「読めばわかる。井戸へ、身を投げたのだ」
「げっ。……そ、そして一命は」
「八十三郎が、気づいて、すぐ救いあげたが、助かるまい。里方へ、黙ってもおけぬ。石川主殿は、娘を殺したのは、庄次郎じゃと、半蔵殿とこのほうへ、膝づめの懸合《かけあ》い」
「ああッ……」
 庄次郎は、髪の毛をむしッて、慚愧《ざんき》の眼をつりあげた。
「どうする気か」
「貴様が、腹を切るのが嫌《いや》なら、わしが切るぞ。二つに一つ、ほかに謝罪の道はない」
 鉄之丞は、対《むか》い合って、草の上に坐りこんだ。
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