[書き下し文]子曰く(いわく)、仁に里る(おる)を美し(よし)と為す。択びて(えらびて)仁に処らず(おらず)、焉んぞ(いずくんぞ)知たるを得ん。
[口語訳]先生(孔子)が言われた。『仁の徳から離れずに居ることは立派なことである。あれこれと選んで仁の徳を離れれば、どうして智者と言えるだろうか?(いや、言えない)。』
[解説]儒教の究極的な目的は、仁の徳を体得してそこを離れずに住み着くことであり、仁の徳を他の悪事から主体的に選び出して仁を実践することである。真の智者とは、学問を修得してさまざまな知識や理論を蓄えた者ではなく、仁の徳を選び取ってそこから離れない者のことを言う。春秋戦国時代の儒家の代表的人物である荀子は、「里仁為美」の部分の「仁」を観念的な徳性としての「仁」ではなく、具体的な儒教を体得した「仁者」と解釈し、仁者のいる里(村)に住み着くことは儒教を学ぶ者にとって善いことだという風に読んだ。