[書き下し文]子曰く、奢れば則ち不遜、倹なれば則ち固し(いやし)、その不遜ならんよりは寧ろ(むしろ)固しかれ。
[口語訳]先生が言われた。『過度に贅沢な生活をしていると、態度が不遜(傲慢)になる、反対に、倹約し過ぎる物惜しみの生活をしていると、態度が自然に卑賤(卑屈)になる。しかし、傲慢であるよりは卑屈なほうがまだいいだろう。』
[解説]孔子は、豊かなライフスタイルや貧しいライフスタイルが人間の精神的態度に与える影響を深く理解していた。贅沢でわがままな生活をしていると、他人の苦しみを思いやれない傲慢不遜な人間になる恐れがあるが、反対に、物惜しみの節約をして貧しい生活をし過ぎると、自尊心が磨り減った卑屈で自信のない人間になる恐れがある。孔子は、程よい贅沢と程よい節約のできる『中庸の徳』を説いているのである。