[書き下し文]子曰く、臧武仲(ぞうぶちゅう)防(ぼう)を以て後(のち)を魯(ろ)に為さんことを求む。君を要せずと曰うと雖も、吾は信ぜざるなり。
[口語訳]先生が言われた。『臧武仲が防の城に篭城した時に、防の城と引き換えに自分の一族の後継者を魯国に再び立てること(家の再興)を要求した。臧武仲が魯公に強要しなかったと言い訳しても、私はそれを信じることが出来ない。』
[解説]魯国の貴族(大夫)であった臧武仲は、孟孫氏の陰謀にかかって魯を追い出され、チュへと亡命することになった。当時の国家原則では、亡命した貴族の家は取り潰され領土も国家に没収されることになるが、再び魯国に戻ろうとした臧武仲は防の城を占拠して魯公に以前と同じような待遇(家の存続・領地の返還)を求めたのである。慣例を重視する伝統主義者の孔子は、臧武仲が陰謀によって魯国を追放されたという事情は知っていたが、それでも国家運営の原則である『亡命者の待遇(家の断絶・領土の没収)』を変えることには反対であった。