[書き下し文]子、衛の霊公の無道を言う。康子(こうし)曰く、それ是くの如くんば、奚ぞ(なんぞ)喪び(ほろび)ざる。孔子曰く、仲叔圉(ちゅうしゅくぎょ)は賓客を治め、祝鴕(しゅくだ)は宗廟を治め、王孫賈(おうそんか)は軍旅を治む。それ是くの如くんば、奚ぞ喪びん。
[口語訳]先生が衛の霊公の無道ぶりについて話された。そこで、季康子(きこうし)が質問された。『そのような仁徳のない君主であれば、どうして衛は滅びなかったのだろう。』。孔子がお答えになられた。『仲叔圉が賓客を的確に接待し、祝鴕が宗廟の祭祀を正しく行い、王孫賈が効果的な軍事を担当していたからです。そのように優秀な家臣に国が守られていれば、どうして国が滅びるでしょうか(滅びることなどありません)。』
[解説]孔子の言葉によると、衛の霊公は自分自身の仁徳・才能には恵まれなかったが、自分を補佐して助言してくれる優秀で有能な家臣に多く恵まれていた。外交関係・宗教活動・軍事政略のすべての部門を担当してくれる優秀で忠実な家臣がいたからこそ、霊公は王位を失わずに済み、衛国を滅ぼすことも無かったのである。