[書き下し文]子貢、仁を為さんことを問う。子曰く、工(こう)、其の(その)事を善くせんと欲すれば、必ず先ず其の器(うつわ)を利く(とく)す。是の(この)邦に居りては、其の大夫(たいふ)の賢者に事え(つかえ)、其の士の仁者を友とせよ。
[口語訳]子貢が仁徳を実現する方法を聞いた。先生はお答えになられた。『職人は良い仕事をしようとすれば、その道具を研ぐ。この国の中では、優れた賢明な大夫に仕え、士の中で仁徳のある人と友人になりなさい。』
[解説]理知・学問に優れた子貢が孔子に『仁徳の実現』について質問した章で、孔子は理性的に論理で物事を理解しようとする子貢に『まずは自分が付き合う相手を見直してみなさい』と実践的な答えを介したのである。儒教では『類は友を呼ぶ・朱に交われば赤くなる』といった格言を真理ととらえる傾向があり、孔子は賢者・君子・仁人・志士など『優れた徳性・意志を持つ人たち』と交友関係を深めるように勧めている。